彼女はやらない
アビゲイルが心配顔できた。
「困惑しています、陛下。お金の問題なので。帳簿を見て気付きました。
大金がモールバラの手に。サラが夫に渡したと」
最後まで言わないうちに女王は一言で退ける。
「彼女はやらない」
断固とした口調にアビゲイルは接ぎ穂もない。
虚しく退室しながら「くそっ、くそっ、くそっ」罵りまくる。
サラと女王の絆は断ち切れないのか。
それに女王の様子が最近おかしい。しきりに郵便を気にしている。
サラの手紙を待っているのだ!
侍女を言いくるめサラの手紙を横取りした。もちろん燃やす。
旧交復活の最後の望みを
サラの「友としての手紙」(具体的に言えば詫び状)に
託していた女王は裏切られた、と思う。
怒りが噴き上がる。
「国外追放に処せ!」