あなたにあげる

 

あなたにあげる

 

他流試合は先生が許可せず沙汰止みになった。

朝、生徒たちが洗面所で顔を洗っている。

フィアマとダイが二人きりになった。こまごましたお手入れの小物を

鏡の前に並べるフィアマを、珍しそうにダイが見ている。

何と言っても女の子ですから、メークに興味がないはずはない。

フィアマがシュッシュッと香水を振りかけた。

見とれているダイに、「これ、あなたにあげる」

フィアマは育ちがいいせいか、ひどい目にあったのに恨まない。

「ありがとう」ダイはテレくさそうに、でも嬉しそうだった。

「私がいい子なら先生もあなたにやさしくなる。努力するわ」

フィアマはダイの気持ちがお見通しだ。

エヴァ先生よりよほど大人です。

 

(「汚れなき情事」 )

 

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