パッヘルベルのカノン

(パッヘルベルのカノン)

 

ラスト、マリアは舞台の位置に向かいます。

セリフはなく「パッヘルベルの3つのヴァイオリンと

通奏低音のためのカノンとジーグ」が静かに流れる。

マリアはシャネルの黒いスーツに白いブラウス、 

マニッシュに脚を組み、自信に溢れ一点を見つめる。

愛とは姿を変え、別のものに生まれ変わり、時を超え、

生きていくことだ。

ヘレナは破滅しかないとわかっていても、

女への愛を勇敢に大胆に、自ら望んだ。

原作者がヘレナを死なせなかったのは、彼女もまた

場所を変え変容し、再生する存在だからだ、  

マローヤの蛇のごとく。

マリアはついに新しいヘレナ像を明晰に結んだ。

もう迷いはない。

ヴァルは見てくれているだろうか。

幕が上がるのをアクトレスは待つ。

 

(「アクトレス~女たちの舞台~」)

 

 

bn_charm