バルセロナがなつかしい

バルセロナがなつかしい

グザヴィエたちは異国に来て、久しぶりに再会した「スパニッシュ・アパートメント」の友だちと、ひとときを過ごす。だれかがいう。

「バルセロナがなつかしい」。そうだ。現実の挫折も失敗も知らず、社会や人や仕事を、好きなように批判できたあのとき。

彼らは社会の中堅と呼ばれる域に入り、責任も重くなってきています。

忍耐も妥協も譲ることも守ることも知らねばならぬ。

「バルセロナ」に該当する言葉は、人によってちがうでしょうが、学生時代への郷愁だけは、万国共通の青春の思いではないでしょうか。

 

(「ロシアン・ドールズ」)