命には命を

命には命を

ハンニバルという青年の行動には、迷いというものが一切ありません。

物事のすべてが水平線まで見えている。

妹殺しの犯人は着々と計画通り消されていく。

彼が食人鬼として獄舎に繋がれたとき、FBI捜査官(実習生)のクラリスが訪問しました。

ハンニバルは生まれ育ったレクター城で美しいもの、エレガンスなものに囲まれて感性を陶冶した青年です。ムラサキを愛したのも、彼女が聡明なだけでなく美しい女性だったからです。もしクラリスが、成績優秀な実習生であっても彼の趣味に合わない風貌だったら、あんなに親切に教えたかしら。

していないわよ、絶対。それくらい彼は自分の好みに「うるさい」のです。

それがたとえ殺しの方法だとしても。

 

(「ハンニバル・ライジング」)