レオナルド・ディカプリオ

では、卓の上に手を

〜「太陽と月に背いて」⑲〜

  では、卓の上に手を   突き離されればされるだけ、ヴェルレーヌの愛慕はつのる。 「言ってくれ、僕は君が好きだ」 「愛している?」 「もちろん」 「では、手を卓の上に。手のひらを上に向けて」 ランボーはライフでやさしくヴェルレールの手のひらの筋をなぞる。 グサッ。ナイフを...

やめろ、この弱虫め

〜「太陽と月に背いて」⑱〜

  やめろ、この弱虫め   次の会話はランボーとヴェルレーヌの違いがよく出ています。 「妻を愛している」とヴェルレーヌ。「信じられん」とランボー。 「マチルドの体が好きなのだ」 「では心は?」 「愛した女には忠実でありたい」 「忠実だと?」 「夕方や早朝や1人でいるとき、目...

君の暴力行為は感心しない

〜「太陽と月に背いて」⑰〜

  君の暴力行為は感心しない   「聖母子」の1件をヴェルレーヌから聞いたのだろう。 ランボーが言う。「君の暴力行為は感心しない。 酔ったあげく暴力をふるう。そのあと平身低頭して謝る」 「人を傷つけるのは嫌いだ」とヴェルレーヌ。こいつ二重人格か。 「ではやめろ。あとで悪かったと...

彼が戻ってきたのね

〜「太陽と月に背いて」⑯〜

  彼が戻ってきたのね   マチルダが赤ん坊に乳をやっている。ヴェルレーヌが入ってくる。 目がヌラヌラしていやらしい。 「これはまるで聖母子の図だ」と言い 「ただしお前の頭に光輪がない。つけてやろう」 マチルダの髪を持って引き摺り下ろし 燭台の火でパチパチと焼くのです。尋常で...

さあ。でもやっていくよ

〜「太陽と月に背いて」⑮〜

  さあ。でもやっていくよ   ランボーは故郷に帰りました。農家です。妹のイザベルが飛びつく。 仲のいい兄妹でした。 母親が心配する。ランボーは以前から家出を繰り返し、 ろくな理由で帰ってきたことはありません。 案の定「ヴェルレーヌと女房ともめて、離婚を言い出した。 僕らの仲...

男の子か

〜「太陽と月に背いて」⑭〜

  男の子か   ヴェルレーヌが久しぶりに自宅に帰ります。 「今までどこに?」と妻が聞く。 「俺が邪魔だと思ってね」 どこまでも夫の答えはねじくれています。 「子供が起きるわ」 「男の子か」 ヴェルレーヌは赤ん坊が産まれていたことも知らない。 酒臭い息を吐く若ハゲの男。ふ...

取引しよう

〜「太陽と月に背いて」⑬〜

  取引しよう   ランボーがヴェルレーヌに持ちかける。 「取引しよう。君は僕を助け、君は僕を助ける。 一緒ならいい仕事ができる。充分に吸収しあったら、別れればいい」 「生活は?」とヴェルレーヌ。 「金はあるだろ」ランボーがちょっと小狡そうに言う。 「俺は君の生活を支え、君は...

まさにくだらん詩だ

〜「太陽と月に背いて」⑫〜

  まさにくだらん詩だ   ヴェルレーヌがランボーを詩人の集まりに連れて行った。 ランボーの詩は酷評される。 「君の詩は確かに見事だが、わざと人を驚かす効果を狙っている。 私は驚かなかった。邪道だからだ」 ランボーも黙っていない。 「まさにくだらん詩だ。あんな寝言は詩への冒涜...

僕は天才になる

〜「太陽と月に背いて」⑪〜

  僕は天才になる   ランボーが回想する。そして宣言する。 「去年の夏、戦争中によく家を抜け出して川へいった。 若いプロシャ兵が眠っていた。しばらく見ていたら死んでいるとわかった。 その時ひらめいたんだ。詩人になるには全てを経験する必要があると。 自分の経験だけでなく、他人の...

だが君も悪い

〜「太陽と月に背いて」⑩〜

  だが君も悪い   マチルダが何気なく訊く。 「父の十字架は返した?」ランボーが盗んでいった十字架です。 ヴェルレーヌは逆上する。 「一文無しの彼を追い出す人間(義父のこと)に キリストを壁にかける権利はない。貧乏は辛いものだ。 彼は本を買えないから盗んだのだ」 やにわに...