彼が戻ってきたのね

 

彼が戻ってきたのね

 

マチルダが赤ん坊に乳をやっている。ヴェルレーヌが入ってくる。

目がヌラヌラしていやらしい。

「これはまるで聖母子の図だ」と言い

「ただしお前の頭に光輪がない。つけてやろう」

マチルダの髪を持って引き摺り下ろし

燭台の火でパチパチと焼くのです。尋常ではない。

夫の気がおかしくなる原因はただ一つ。

「彼が戻ってきたのね」ランボーがパリに帰ったのだ。

どっちもマチルダにとっては厄病神です。

マチルダは健全な生活者です。詩など必要としない人もいるのだ。

ご両親が健在なうちにサイコ男は三行半に限る。

 

 

〜「太陽と月に背いて」〜

 

 

bn_charm