ハーヴェイ・カイテル

聖歌隊に入りなさい

〜「天使にラブ・ソングを」⑳〜

  聖歌隊に入りなさい   「あなたの活動は一つに限定するわ。聖歌隊に入りなさい」 ドロレス、ショック。音痴の集団である「あの聖歌隊?」 「そう、あの聖歌隊よ」と院長。 「眠ることと歌うことがあなたの仕事よ」 飲まず食わずで歌えってこと? 生まれて初めてドロレスは困惑する。 ...

お願い、追い出さないで

〜「天使にラブ・ソングを」⑲〜

  お願い、追い出さないで   「たまには塀の外に出たいのよ」とドロレス。 はい、そうですかと聞く院長ではない。 「昔と違って僧衣だけでは身を守れない。 あなたにはもっと快適なところを探してもらうわ」 暗に去ることをほのめかす。 飛び上がったのはドロレスだ。 「追い出さない...

あなたさえいなければ

〜「天使にラブ・ソングを」⑱〜

  あなたさえいなければ   こっそり修道院に帰ったものの、入った途端、一同棒立ち。 廊下の中央でおごそかに院長が待っていた。 修道院始まって以来の珍事である。 「あなたさえいなければこんなことは起きなかった」 もちろんドロレスのこと。3人はうなだれて聞くが、なんとなく 楽し...

ちょっと踊ってくるわ

〜「天使にラブ・ソングを」⑰〜

  ちょっと踊ってくるわ   バーに入った3人。時ならぬ尼僧の出現に客は目が点。 陽気なリズムにノリのいいパトリックが、 「ちょっと踊ってくるわ」 ホールに出るや、見事なステップを踏み注目を独り占めする。 「ちょっと」ですみそうもないパトリックにドロレスの方が心配し、 やっと...

時には発散も必要よ

〜「天使にラブ・ソングを」⑯〜

  時には発散も必要よ   世間の泥水を飲んできたドロレスから見たら メアリーはまるで天使だ。免疫がない。 「知ってる?」とドロレスは悪戯っぽく「時には発散も必要よ」 「知ってるわ」とメアリーは言うが、どこまで何を知っているのだか。 ところがメアリーにはよき相棒がいた。 尼僧...

もっと自分の力を磨きたいの

〜「天使にラブ・ソングを」⑮〜

  もっと自分の力を磨きたいの   ドロレスはメアリー・ロバートが行き暮れているのを見てとる。 「奉仕が自分の使命だとずっと思ってきた。 もっと自分の力を磨きたいの。自分でなければできないことで」 めずらしくドロレスが聞き役に回っている。 「あなたが来て本当にうれしいの」 や...

寂しいのじゃ、ないかって…

〜「天使にラブ・ソングを」⑭〜

  寂しいのじゃ、ないかって…   「あなたのような人でも、寂しいのじゃ、ないかって」 メアリー・ロバートはおずおずと話しかけ 「5時起きはつらい? 私もつらかったけど、今は4時半に起きるわ」 「これ」と、可愛い目覚まし時計をドロレスにあげる。 「私は普通の人よりやることが下手...

雑用をやりなさい

〜「天使にラブ・ソングを」⑬〜

  雑用をやりなさい   修道院には聖歌隊があった。 音程の狂った合唱にバラバラの声。院長さえ眉をひそめ、 こっそり耳をふさいでいる修道女もいる。 ドロレスは「お話があるのだけど」院長に申し出るが 「雑用をやりなさい」 その結果、ドロレスは大きなお尻を持ち上げ床拭き、食器洗い...

その虚しさを考えなさい

〜「天使にラブ・ソングを」⑫〜

  その虚しさを考えなさい   こんな部屋で眠れないと文句を言うデロリスに 「眠れなければ今までの人生について考えなさい。その虚しさを」 「ここに来る前は充実していたわ。友だちも仕事もまともな服もあったわ」 院長は落ち着きはらい 「あら、そう? 歌手としての実績はないも同然と聞...

ここの生活は質素よ

〜「天使にラブ・ソングを」⑪〜

  ここの生活は質素よ   院長はデロリスを居室に案内する。 窓は小さく暗くて狭い個室だ。ベガスで24時間、したい放題に 暮らしていたデロリスは息がつまる。不満そうにジロジロ部屋を見る。 院長は察したように「ここの生活は質素よ」 「石器時代ね」とデロリスは返す。 「電話はどこ...