女王に気安く触れるな!
うたた寝から覚めた女王の目に、
アビゲイルがウサギを何気に踏みつけているのを見えた。
これがアビゲイルの正体だった。
ムクッとベッドから起きた女王は不自由な脚でよろめく。
「アン、愛しいアン」アビゲイルが駆け寄り助け起こそうとする。
その時だ。「気安く女王に触れるな!」
支配者の声だった。誰も寄せ付くことを許さぬ絶対君主。
アビゲイルは凍りつく。
「すみません」
「話せと命じていない」
「はい」
「許可なく口を利くな」
跪くアビゲイルの頭をわしづかみにして体を支える女王の脳裏に
無数のウサギが幻のように浮かんでは消えた。