彼女のせいだろ?
移籍して指揮者として楽団を率いないかと
ターがセバスチャンに打診する。ベルリンフィルの
副指揮者に充分満足しているセバスチャンは
「これは提案でなく、命令だ。
若い女がきて、私は長くないと直感した。彼女のせいだろ?
あんたの彼女贔屓を、みな知っているんだ」
ターは攻撃に転じる。
「私の誠実さを疑うなら、退団した方が本望でしょ!」
これで決まり。
「彼女」とはフランチェスカです。彼女も指揮者ですが、現実は
日程管理やメールの送受信、会食の手配など
秘書兼雑用係にこき使われている。
それを耐えてきたのは、いつかは副指揮者と、
ターが言外に期待を持たせていたからでしょう。
〜「TAR ター」〜