行かないで
ここは崑林駅。荷物をまとめたリー・ミンが道端の石段に座って
汽車を待っている。
アンが来た。
「ごめんなさい」リー・ミンに声をかけた。プイッ。
横を向くリー・ミンに「行かないで」
完全にこじれているリー・ミンにアンは話しかける。
「あなたと私は似た者同士。私も母のない身なの。
母は10歳のとき亡くなった。行かないで。
父は怒りっぽい性格で誰にでも怒鳴るの。本当は善良な人間よ。
私は20年も一緒で慣れたけど、我慢できない時もあるわ」
一人は孤児だった。一人は家の中の孤児だった。
二人とも寂しかった。
「行かないで」といったアンに
「つらいね」リー・ミンが答え、腕に触れた。
〜「中国の植物学者の娘たち」〜