「見てよ、あの数」
砂塵をあげて追跡してきたパトカーが、二人の車を追い詰めた。
前方には広い空だけがある。
「ここ、グランド・キャニオン?」
「美しいわ」
「本当ね。信じられない」
「見てよ、あの数」「私たちのために?」
前には断崖と空だけ。後ろにはパトカーがびっしり、
壁のように警官が並び銃を構えている。
「どうするの?」とテルマ。「降参なんか」とルイーズ。
ハルはFBIと言い争っていた。
「銃を降ろさせろ」「バカ言うな。向こうも武装してるんだ」
「考えてやれ!」ハルは怒鳴る。「痛めつけられっぱなしの女なんだぞ」
車から降りる気配はない。残るのは一斉射撃だ。