じゃ、やめれば?

じゃ、やめれば?

 

マリアの迷いは続きます。

ヴァルのアドバイスも効果を発揮しそうにない。

絶景のアルプスの山道を歩きながら、苦しげにマリアが言う。

「演じるのが苦痛よ」

「じゃ、やめれば?」ヴァルはあっさり肯定する。

「だからやめるっていっているのよ!」

ケンカ腰でマリアはヴァルに噛みつきます。

マリアが口でなんといおうと、ヘレナを演じることはヴァルには

わかっている。女優の業を見抜いている。

メフストフェレスのように落ち着きはらっているヴァルに、

マリアは苛立ちを隠せない。

 

(「アクトレス~女たちの舞台~」)

 

 

bn_charm