VOL.3 子宮の中の……?
ジャネーの法則に捕まっている衛澤ですご機嫌よう。
暑さ厳しい季節となりましたが、みなさまはお元気でいらっしゃいますでしょうか。私は大きな不調はないものの、今年に入ってからマイナートラブルに苛まれております。
マイナートラブル……周期的に繰り返す、身体を起こしていられないほどの倦怠感。
ひどいときは眠りから覚めた途端に全身が重怠くて起き上がれません。鉛を着ているような重さがなくなるまで横になっているしかありません。
一日に何度も波のように繰り返す猛烈な眠気。
もともと私は持病の影響で睡眠障碍を併発していますが、それがひどくなってきた感じです。直ぐ眠くなるのに長く眠れないのです。猛烈に眠くなって目を開けていられないので横になって眠っても、2、3時間ほどで目が覚めてしまいます。目が覚めたら起きて仕事をしますが、3時間ほど経つとまた猛烈に眠くなってとても起きていられない状態になります。そして寝るのですが2、3時間しか眠れず……。昼夜問わずこれを繰り返すのです。
この二つと仕事とに時間を奪われてしまうために運動するための時間を取れず、だから慢性的な運動不足です。物理的に動かないので徒歩での移動速度が絶望的に遅かったりもします。これが更に時間のなさに加速度をつけたり。
おかげさまで私は自宅で一人でできる仕事をさせて頂いてまして、毎日の生活には大きな支障がなくて済んでいますが、外に勤めには出られないなと、社会の外の空気をひしひしと感じています。
そんな風に時間がない毎日を過ごしておりますが、先日或る拍子に時間が取れましたので、ほんとうに久し振りに新刊を買って読みました。
「子宮の中の人々」(EMI/KADOKAWAエンターブレイン)。妊婦さんの身体の中ではいったい何が起きているのかを明快に描いた漫画です。「子宮の中の人」とは赤ちゃんのことではありません。
人体の中では小さな人々が働いていて、その人たちが人体を平滑に動かしているのだ、という仮定で描かれています。たとえば、この本の冒頭では人体の胃で働いている小さな人が、子宮で働いている人と話します。
「子宮ってどうなの、忙しい?」
「ちょーラクだよ、やることねーもん。仕事月に1回みたいな」
「いいなあ、私、胃だけどまじ忙しい」
その月に1回の仕事の頃、子宮では作業がはじまります。
「子宮内膜、交換しまーす」
「お疲れ様でーす」
「もう1ヵ月か、早いなあ」
こんな感じです。でも、この後、子宮で働く人々ははじめての作業と厳しい納期と過酷な労働条件に翻弄される運命と出会うのです。
また、人体の中の人たちのことだけでなく、人体の人や人体の外の人の話も描かれています。この本を一ト通り読めば、妊娠から出産までの女性とその「中の人々」のことが割りと詳しく判ります。シンプルな絵柄と簡潔明快な内容で読みやすく、判りやすい本です。性別を問わずおすすめしたい。
さて、この本の中では妊婦さんの身体に起こる変化や症状が明らかにされているのですが、その中に「ずっと眠い、直ぐ眠くなる、妊娠後期にはちびちび睡眠になる」というのがありました。
ずっと眠いとか直ぐ眠くなるなどは、もしかしたら月経時に似ているのかなと思っています。生理がはじまる少し前から終わる頃まで、すごく眠いですよね。30代半ばまでは私も女性体で生活していましたから、これは実体験として知っています。
しかし、妊娠後期の「ちびちび睡眠」。本には「2〜3時間寝る→しばらく起きる→2〜3時間寝る→昼も夜も関係なくこんなループが続く」とあります。まさにいまの私の症状。ということは。
私は妊娠しているのかもしれん。
と、思いました。8年ほど前に子宮は切除しちゃったおじさんですが。そう言えばお腹が臨月のように大きい……!
※ジャネーの法則:時間の心理的長さは年齢に反比例する=年を取ると時間の経過を早く感じる
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■衛澤 創(えざわ・そう)
和歌山市出身。文筆家。随筆・小説を主に書くが特に分野にはこだわらず頼まれたものを書く。
性同一性障碍者。足掛け15年かかって性別適合手術をすべて終え、その一方で性的少数者の自助グループに関わって相談業務などを行う。
性同一性障碍であると同時にゲイでもあり、「三条裕」名義でゲイ小説を書くこともある。
個人サイトに性別適合手術の経験談を掲載しているので、興味がある方はどうぞ(メニューの「記録」から)。
個人サイト「オフィス・エス」http://officees.webcrow.jp/