姉さんが戻ったらしい
ベンジーの部屋に夜、父のスタッフォード博士がきます。
「姉さんの話だ。戻ったらしい」
「刑務所にいるかと思っていた」
「病院にいたんだ。遠くの。でも18歳で自由になった。病院も拘束できない。
接近禁止命令を要請しているが。アレは危険だ。
アレが戻ってきたら教えてくれ」
娘を「アレ」としか呼ばない言い方に冷たいものがあります。
父が部屋から去って、ベンジーは読みかけていた詩に戻る。
「夜な夜な小石の上に/日々のパンの上に/結ばれた季節に君の名を書く…」
姉と弟は、相手の魂を呼び出すマントラのように、この詩を暗唱するのです。