もう1台、車を見つけて
セルビーを掌中の玉のごとく大切にするアイリーンに比べ、セルビーの愛が
同質であったとは思えない。
「これだけの荷物、車じゃないと運べない。もう1台、車を見つけて!」
殺人のあと、心身ともクタクタになって帰ってきたアイリーンに
叫ぶように言い続ける。
「約束通りにして。あなたが決めたことを。ビーチの家で暮らすのも、
あなたが言い出した」
相手の言葉尻を捉え、自分の要求を肩代わりさせるのがうまい。
セルビーにはアイリーンが自分のいうことを聞いて当然という意識が
ありました。身を売ってお金を稼いでくるのも当然、
車を手に入れるのも当然、何となれば私を愛しているのだから。
アイリーンが自分を愛するのは自分にその価値があるからだと、
完全に勘違いしている。こういう人、いますね。
愛は愛の対象の中にあるものではなく、愛する人の中にある、
それがわからないヒト。