愛しているわ
I love you.
キャロルは態度や行為、表情などで率直に愛情を
表してきましましたが、言葉で愛していると
いったことはなかった。少なくとも映画のなかではね。
おしなべてキャロルのセリフは冷静で甘さがありません。
しかしこのときはさすがのキャロルも、頑固なテレーズに、
(まさか本気で別れるつもりでは?)
一瞬おそれがよぎった。
その途端、目の前に浮かんだ。
自分を見つめるひたむきな目、
身を投げ出したテレーズの情熱、楽し気に響く笑い声、
腕の中にはいる細い背中の可愛らしさ、
ふたりが紡いだ愛しき日々よ…
ただただ、なつかしさだけがこみあげてくる。
「愛しているわ」吐息のようにキャロルはもらす。
みるみるうるんでくるケイト・ブランシェットの瞳は、
神業としかいえません。