あのさ、私はちっとも望んでない
やかましく言われるのに、
なぜ家を出ていかないのかというゲイルの問いに
「あのさ、私はちっとも望んでない」
キャス言うには
「彼氏、ヨガ、家、子供、仕事、欲しけりゃ手にしてる。
欲しくないの」
「でも何か望みがあるでしょ」
キャス、無言。
望みはある。
でも言えない。言わない。口に出すには重すぎる。
それはキャスの大脳のド真ん中に陣取って、
太陽をめぐる地球のように、来る日も来る日も回っている。
〜「プロミッシング・ヤング・ウーマン」〜