ニナ、私が黒鳥を踊ってあげるわ
幕は上がった。ニナは滑り出しで失敗した。
王子役がニナを受け止められず、落としてしまったのだ。
トマは苦虫を噛み潰し、「まずい出だしね」とリリー。
幕間の休憩時間、ニナの楽屋にリリーが来た。
「ねえニナ、私が黒鳥を踊ってあげるわ」
これこそニナが最も恐れていた事態だった。
「黒鳥5分前だぞ」と告げるスタッフの声。
「私の番よ」というリリーの腹部に、ニナは大きな鏡の破片を突き刺す。
倒れたリリーをクローゼットに押し込み、
流れ出した血をバスタオルで隠してニナは舞台に上がった。
〜「ブラック・スワン」〜