「ブレンダ!」「ジャスミン!」
息子のサルも、娘のフィリスも走り出てきた。
「ブレンダ!」「ジャスミン!」
ふたりはすぐ店には入らず、あたりを歩き回り、
空白を埋めるように座って話し込んだ。
ブレンダはジャスミンが帰ってくるという
予測はあっただろうか。なかったと思う。
ドイツは遠い。ブレンダがアメリカに
旅行にきた理由は知らないが、暮らしは中流の主婦で
とびきり裕福とも見えなかった。
そう何度もアメリカに来ることはできないだろう。
それに、ここに何がある?
だだっ広い砂漠と、
チンケなダイナー兼モーテル兼カフェだ。
無意味な人生がまた続くのだ。そう思っていたと思う。
〜「バグダッド・カフェ」〜