あなたに生きて欲しいの

 

あなたに生きて欲しいの

 

危篤から女は持ち直したが意識はない。

エレーヌはつききりで泊まり込んでいる。

ベッドのそばに座り話しかける。

「私はエレーヌ。あなたは他人だけど、生きて欲しいの」

反応はない。

聞こえてはいるかもしれない、という医師の言葉を信じて

エレーヌは諦めなかった。

どこの誰か、名も素性もわからないが、

よほどひどい身の上なのだろう。

傷が治れば、若くて綺麗な子だ。

そんな女性が生きる方法といえば限られている。

身寄りが誰一人探しにくる様子もなく、

半死半生で息だけしている女は横たわる孤独だ。

それをエレーヌは他人事と思えなかった。

 

〜「女はみんな生きている」〜

 

 

bn_charm