置き去り?

 

置き去り?

 

メアリーがさびしそうに何か書いている。

シャーロットが帰ってきた。髪もドレスも雨に濡れている。

拭きもせず切口上で「置き去り?」

「何を書いていたの。見せて。隠すことないわ。見せて。お願い!」

きつい口調でひったくる。

声に出して読む。

「私はひとりぼっち。その人は夢の中で私を想い、愛してくれる。

ピクリと目が覚めると夢は消えて、私はひとりで泣いている」

これがまあ、あの剛気なメアリーか。

中学生のように幼い詩だ。でもシャーロットは感動した。

手を握ると、メアリーはゴツゴツした手を恥ずかしそうに引っ込めた。

そうか、メアリーは私を好きなのだ。私たちは両想いだ。

シャーロットは胸に

それまでの人生で感じたことのなかった充実を覚えた。

メアリーを見つめるシャーロットの視線に力がこもります。

 

 

〜「アンモナイトの目覚め」〜

 

 

bn_charm