選べる人にはわかりません
お嬢さまのやや不機嫌な問い返しに、マリアンヌは話題を変えます。
「修道院はお好き?」
「修道院には音楽も図書館もありました。それに皆が平等です」
「私は息苦しくて逃げ出しました。
ノートに絵を描いては怒られた」
「絵を描くの?」「少し」
「あなた、ご結婚は?」
「一生しないかも。たぶん父の仕事を継ぎます」
「選べる人にはわかりません」お嬢さまは口調には絶望が混じっている。
「わかります」とマリアンヌ。
(わかっていない、口だけよ)がお嬢さまの本心。
お嬢さまが正しいと思うよ。
彼女の人生の出口を閉ざした結婚は深く彼女を傷つけています。
このあたり、マリアンヌは無神経すぎる。
〜「燃ゆる女の肖像」〜



