ロールケーキを4つ
エヴァ先生はある日外出する。
緊張しています。ぶつぶつと呪文のように唱えるのは
「パンを一斤、ロールケーキを4つとタルト3つ」
これを何度も繰り返しながらベーカリーショップに行く。
先生の性格のひずみの現れる印象的なシーンです。
エヴァ先生は学校から1歩も出たことのない引きこもりなのです。
世界中を旅行したなんて嘘。本で読んだだけ。学校と生徒という
限定された狭い世界なら先生は万能だけれど、1歩外に出ると
たちまち対人恐怖症に陥る。恐ろしくて買い物などできない。
死に物狂いの勇気を奮って先生は外出した。
どもりながら注文し、わなわな震える指でコインを数える。
店の主人は、美しい客の怯えた表情をいぶかしげに見る。