今のままでもいい
珠子は寂しかったお嬢様の生活に光を差しこませました。
秀子はすでに偽伯爵からプロポーズされ、次の満月に
駆け落ちすることになっている。でもお嬢様はどうも気乗り薄だ。
「今のままでいい。お前がいてくれたら。お前は私に、
天涯孤独の私に、あの人と結婚してほしい?」
「愛せると思います」と珠子は答え、激しい平手うちを食う。
秀子の腹の虫はおさまらず、珠子を掴むと寝室から追い出します。
一途に自分を好いてくれる情のある珠子が愛しくなっている。
なのにホイホイと「男を愛せる」なんて、軽いこと言うな!