1976年秋冬コレクション
この映画は本シリーズの冒頭で書いたように、1967年から1976年の、
イヴ・サンローランの時代を取り上げたものです。モードの帝王がいかにして生まれたかというより、
彼は生まれ持った天才のためにどんな代償を払って
きたか、素顔の「帝王」に迫りたかったのだと思うのです。
ドラッグに溺れ、退廃的な生活にどっぷり、ペットさえ薬物過剰で死なせ、
ピエールがいなかったら男娼に捨てられ命を落としていても不思議はなかった。
サンローランのショーは、破滅とギリギリのところで生まれていたと言えます。
これだけ私生活に踏み込んだら、映画化の協力を全面的に得るのは
難しかったでしょうね。でもやっちゃったのね。
サンローランが唯一、満足のいく出来栄えだったというのが
1976年秋冬コレクションでした。ステージを流れるように歩くモデルたち、
まとう衣装のきらびやかさ、あっと言わせる独創とエレガンス。
モデルたちと腕を組んで笑顔で現れるサンローラン。
彼の人生の頂点にふさわしい成功でした。