あの二人は犯人じゃないわよ
リドリー・スコットの作品には、男の中の男と言いたくなる男性と、
サイテーの男が共存しています。本作では二人の女を追う刑事ハルが前者、
女房を人間扱いしないテルマの亭主、詐欺師のコソ泥が後者。
コソ泥に当時28歳だったブラット・ピットが扮しました。
彼はオーディションで落ち続けたが、欠員ができたため滑り込んだそうです。
筋肉のしっかりついたスリムな肢体と甘いささやきでテルマをたらし込み、
奪った6000ドルが彼女らの運命を狂わせました。
酒場に捜査に来たハルにウェイトレスがいいます。
「ハーランなんか、駐車場で撃ち殺されて当然の男よ。
あの二人は犯人じゃないわ。撃ったのが女房なら勲章ものよ」
二人をかばおうとする無名のウェイトレスに、リドリー・スコットは
運命すら女たちに不公平であった時代と社会への抵抗を示させています。