乳房のある男性優位主義者よ

乳房のある男性優位主義者よ

 

マヌエラはどうしてそんなにロラ(元夫)を嫌うのかと訊かれ、

「男と女の悪い面を両方持った人よ」

彼はパリで手術を受け、マヌエラより大きな乳房になって帰ってきた。

「乳房以外は男だったから、彼を受け入れたわ」

アグラードが「女は寛容なのよ。美徳だわ」

マヌエラはピシャリ「女は愚かよ。みな潜在的にレズビアンだし」

ロラを受け入れたのは自分が愚かだったから。ロラは女の愚かともいえる

やさしさにつけ込むのがうまい。

アルモドバルに幻想はありません。男も女も一皮剥けばみなエゴイスト。

でもちょっとしたいたわりがあれば幸せになる可能性がある。

どこにでもいる、むしろ普通の人たちより不幸かもしれない人々の

「ちょっとしたいたわり」「心の温かさ」をアルモドバルの映画は湛えます。

次のシーンなんか典型的です。

 

(「オール・アバウト・マイ・マザー」 )

 

bn_charm