「アグラード?」「マヌエラ!」
もう一人、素晴らしい女優が登場します。
娼婦たちが集う通称「野原」(カンポ)をタクシーで通りかかったマヌエラは、
男にボコボコに殴られている女を見かける。
放っておいたら殺される。マヌエラは車を止め大きな石で男の頭を殴る。
闘牛の国、スペインです。女が怒れば牛より強い。
血だらけの女は女装したトランスの街娼アグラードだった。
18年ぶりの再会。アグラードに扮するのはアントニア・サン・ファン。
この映画の役柄が強烈だったため、長らく男性だと思われていましたが、
正真正銘の女性です。男からは女、女からは男と、いじめられ、
バカにされながら生きてきた。でも彼女は明るい。
「手紙も電話もくれないから、死んだと思ってたわよ」とマヌエラに抱きつく。
この映画の主役はアグラードではないかと思うほど、
アルモドバル監督の彼女を見る視線はやさしい。