ジェームズ・ウィルビー

英国は人間の本性を否定してきた

〜モーリス⑯〜

英国は人間の本性を否定してきた 再度ジョーンズ医師をモーリスが訪ねます。「昔なら死刑になっていた。どこか外国にいって暮らすんだな。フランスか、イタリアか。同性愛が罪とされぬ国で。英国は昔から人間の本性を否定してきた国だ」つまり、彼は同性愛が病気ではなく否定されているだけという捉え方をしています。モーリスは救...

俺を呼んだだろ

〜モーリス⑮〜

俺を呼んだだろ 悶々と眠れない夜を過ごすモーリスの部屋に、猟番のスカバーが窓から入ってきます。驚くモーリスに「俺を呼んだだろ。聞こえたんだ」テレパシーなのでしょうか。スカパーはためらいも見せず「何も考えないで。横になって」モーリスは長いあいだ妄想していた世界を実際に体験します。月明かりか、星明かりか、薄闇の...

母のところに帰りたい

〜モーリス⑭〜

母のところに帰りたい モーリスはジョーンズ医師(ベン・キングスレー)の診察を受けます。ベン・キングスレーという人、ガンジーにもなればインド人の運転手にもなる七変化の人。催眠療法でモーリスを眠らせます。モーリスは彼を信頼できるらしく、素直に催眠に従います。美人が現れたり、知らない部屋で絵を見たり、と思うと「母...
火

忘れよう

〜モーリス⑬〜

忘れよう モーリスが内面の葛藤を書いている。「体が発育した頃から淫らな想像をした。僕は呪われている」大学では勉強と、厳しいスポーツを課したが、妄想は去らない。医師に相談したが「汚らわしい」と言われ、「若い娘と付き合えば治る」と。モーリスには自分の性向が一時的な現象ではなく、自分自身のもっと深いところから発し...

私のカンでは恋をしているわ

〜モーリス⑫〜

私のカンでは恋をしているわ   あけましておめでとうございます。 みなさまにとって佳き年でありますようお祈り申し上げます。   ふさぎ込むモーリスの様子に 「私のカンでは恋をしているわ」とアンは夫に告げる。 クライヴは微笑を返すものの、うつむく。 「ロンドンに恋人がいるのよ...

人に言えない病気です

〜モーリス⑪〜

人に言えない病気です 精神的に追い込まれたモーリスは医師を訪ねます。「人に言えない病気です。女のことです。僕もオスカー・ワイルドと一緒なのです」思いつめたモーリスに医師は「いいか、モーリス。悪魔の汚らわしい誘惑に耳を傾けるな。何も言うな」モーリスはそれですまない。「悩んでいるのです」「くだらん!」(それはな...

クライヴが婚約したわ

〜モーリス⑩〜

クライヴが婚約したわ クライヴが婚約した。モーリスの妹と、いう話もあっただけに、モーリスは妹を気遣います。モーリスにはクライヴと家ごと、家族ごと引き離される気がしたでしょう。ほどなく婚約を知らせる電話がクライヴから。「アンと代わるよ」電話に出た婚約者アンは育ちのいいお嬢さんそのもの。はにかんで「あなたは電話...

リズリー子爵、逮捕

〜モーリス⑨〜

リズリー子爵、逮捕 ショッキングなニュースが伝わりました。新聞にでかでかと「リズリー子爵風紀壊乱罪で逮捕」リズリーはケンブリッジ大学の友人です。オスカー・ワイルドもこれより前、同じ罪で逮捕されていました。同性愛は目の敵です。リズリーがクライヴに弁護を頼むがクライヴは口をモゴモゴさせる。「そうか、僕と関係を持...

いずれはここの知事よ

〜モーリス⑧〜

いずれはここの知事よ クライヴの母親は言います。「この屋敷はクライヴの財産よ。いずれはここの知事よ。大学なんかやめて家に戻ってほしい。政治家の未来が開けるわ。旅行もして見聞を広めないと。アメリカや植民地を見るのもいい勉強よ。でもギリシャはダメ」男を愛する悪しき習慣の地「ギリシャはダメ」クライヴの人生に自分が...

すべてが汚れる

〜モーリス⑦〜

すべてが汚れる ベッドで迫るモーリスに「そういうことをすると汚れる感じがする」え、え〜? 「すべてが汚れる。この調和も、肉体も、精神も魂も…女にはわからない」女でなくてもわからないと思うけど。クライヴはモーリスに「でも君にはわかる」お言葉ですが、モーリスだってわからなかったですよ。モーリスはもうがっくり。講...