ラウリ・ティルカネン

我らの歌の響きを聴け

〜 「トム・オブ・フィンランド」30

我らの歌の響きを聴け   「問題が起きた」ダグから緊急電話。 「ゲイがウィルスの元凶だと訴えている。 君の絵も危険視された。印刷もできない」 トムはアメリカに飛んだ。 機上の窓から戦闘機が炎上墜落する幻想を見る。 フィンランドの戦場が浮かんだ。 「我々は負ける、...

僕たちの存在を知らせてくれ

〜 「トム・オブ・フィンランド」28

僕たちの存在を知らせてくれ   トムとヴェリがショッピングする。 生地店でカーテンを選ぶ。 黄色い生地があってそれを選んだ。 「女々しい色だ」 そんなことを言いながらトムとヴェリはカウンターで手を繋いだ。 隠れず人前で手を繋ぎたい、 そう言っていたヴェリの夢をト...

どんな苦労でもするよ

〜 「トム・オブ・フィンランド」27

どんな苦労でもするよ   「ロスには名医がいる。喉頭ガンも治せるよ」 トムは続ける。 「庭付きの家に住んでオウムが飼える。 人口の大半はゲイだ。 逆にストレートは差別されるのさ。 だから助けてやるんだ。彼らにも自由に生きる権利があると。 ヴェリ、君のためならどん...

アメリカにはいい男がいたか

〜 「トム・オブ・フィンランド」26

アメリカにはいい男がいたか   トムが一時帰国した。 相変わらずヴェリは妙な咳がやまなかったが、明るく訊いた。 「アメリカ進出か。アメリカにはいい男がいたか。 君が描くみたいな」 「ああ、いたよ。だが1人たりともあるダンサーほどには 賢くて、優雅で、セクシーではなかっ...

君が彼らを特別にした

〜 「トム・オブ・フィンランド」25

君が彼らを特別にした   「なあ、トム」とダグ。 「俺たちの仲間は逃げてきた。家や学校や、病気から逃げてきた。 否定され、差別されて」 ジャックはこう言う。 「地元では殴られる。最低だよ」 ゲイが受けてきた差別。軽蔑から逃げるしかなかった存在。 「君がそんな仲間...

描くのをやめる

〜 「トム・オブ・フィンランド」24

描くのをやめる   しかし出来上がった作品集にトムは不機嫌だ。 「とんだ粗悪品だ。オナニー本さ」 「そのおかげで人気が出たんだ。誰も表紙以外、気にしないよ」 たかがそんな雑誌か。 「なら描くのをやめる」不満を募らせるトムに ダグが冷静に話しかけた。  ...

これにサインしてくれ

〜 「トム・オブ・フィンランド」23

これにサインしてくれ   トムは初めてのアメリカに目を見張る。 北欧とはまるで違う太陽の光。街の人々の開放的な姿。 衣服、彩り、賑わい。何もかも別世界だ。 夜のロスのトムの個展会場は、小さな狭い店だったが 制服の男たちが詰めかけ、ひしめいた。男、男、男。 「これにサイ...

アメリカ乾杯!

〜 「トム・オブ・フィンランド」22

アメリカ乾杯!   アメリカの出版者ダグから手紙が来る。 「アメリカに来てくれと。小さな個展を開きたいそうだ」 トムとヴェリは祝杯をあげた。 「アメリカ乾杯!」 ヴェリは苦しそうな咳をしている。 「医者に行けよ」 「行ったよ、そのうち治るよ」 「次は君も一...

表紙に使えそうだ

〜 「トム・オブ・フィンランド」21

表紙に使えそうだ   トウコはペンネームをトムと変え、作品集を投函した。 アメリカのロスアンジェルス。小さな事務所で ポルノ系雑誌の出版者2人が作品を見ている。 「表紙に使えそうだ」 「表紙の画家にしちゃ名前が地味だな」 「トム、トム…トム・オブ・フィンランドでいこう...