ダニエル・クレイグ

すべては朽ちる

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」㉘〜

すべては朽ちる ニヒリスト、フランシス・ベイコンの決めセリフです。こういう人もどことなく辛いわね。すべては朽ちるのは真実だけど、わかりきっていること、いちいち言わなくてもいいでしょ。まるで人と楽しくやるのが地獄みたいね。案外こういう人、いるのではないかしら。人と関係性を築き、深めるのが苦手な人って。だからって...

愛しているんだ、フランシス

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」㉗〜

愛しているんだ、フランシス ベイコンの心は離れていますが、ジョージは思い切れない。   「愛しているんだ、フランシス」去りゆくベイコンを引き止める。それに対するベイコンの返事。「どこでそんなセリフを? テレビか」人を愚弄するにもホドがあります。ベイコンのことを感性が鋭いゆえに自分も人も傷つけると書きましたが、...

最後に残るのは一山の骨

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」㉖〜

最後に残るのは一山の骨と数本の歯 ベイコンは徹底的なリアリストです。彼の幻想怪奇な絵は、形象のデフォルメではなく、人間の心の歪みを描くとこうなるとでもいっているようです。感性が異様に繊細ですから、こんなセリフがサマになる。「彼(ジョージ)の汗ばんだ脇の下。彼の靴下。洗面台に残されたひげ剃りのあと。彼の鍵が錠の...

わたしはジョージが好きよ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」㉕〜

わたしはジョージが好きよ 画商のイザベラは、数少ないジョージの味方です。「わたしはジョージが好きよ」とベイコンにいう。「パブで見たときは憔悴して、男娼たちにたかられていたわ。彼はまるで死体みたいだった。パリ行き?本気でいっているの? 中毒を早く治さないと手遅れになる。なんで連れて行くのよ?」アンドレ・ジイドの...

男の好みが災難の元よ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」㉔〜

男の好みが災難の元よ ジョージが苦しんでいる。イザベラははっきりいいます。「ベイコンを愛しているのね。男の好みが災いの元よ」イザベラは画商ですから、ベイコンのようなエゴイストでないと描けない絵があることがわかっている。ベイコンに心安らぐ愛を求めても無駄だ。でもそんな男を好きになってしまっている。「男の好みは災...

また会える? 明日は?

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」㉓〜

また会える? 明日は? ベイコンとはサド男でして、「君はジャマだ」とか、平気でいうのです。「おれを描いた絵だ。ひとつも似ていないけど」ジョージがそういうと、「批評をどうも。自分の実力が分かったよ。有意義な話は終わりだ、早く失せろ」まるでゴミみたいに扱います。ところがジョージは「また会える? 明日は?」と訊く。...

あんな絵を家に飾るやつがいるか

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」㉒〜

あんな絵を家に飾るやつがいるか 素人に絵はわからない?絵って、わかる、わからないで見るもの?ジョージはいいます。ベイコンの絵を「あんな絵を家に飾るやつがいるものか。肖像画はちっとも本人に似ていないし、ベイコンの仲間もクズだ。 発情した犬みたいな連中が、気取りやがって」ジョージは的確だったわ。ベイコンの絵はみな...

ジョージの肖像は愛の詩よ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」㉑〜

ジョージの肖像は愛の詩よ 画廊主のイザベラは違った。彼女は絵を見るプロだ。ベイコンの描いたジョージの肖像が「愛の詩」だという。そうだったに違いない。ベイコンは現実の関係より絵のほうに心を打ち込み、本来ジョージに伝える愛情や、やさしさやを絵のほうに託したのです。でもね〜、いくら美しい詩のような絵を描いてくれたと...

連中がオレをバカにするんだ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑳〜

連中がオレをバカにするんだ ベイコンがジョージを笑い者にする、ベイコンの取り巻きもそれに倣う、ジョージは孤立していきます。「とにかくストレスが多くて。一緒にいる連中がオレをバカにするんだ」ベイコンにその気はなくとも、成功者がジョージを見るのは所詮「元泥棒の与太者」に対する上から目線です。ジョージは蛇に睨まれた...

わたしは強い愛人を夢見る

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑲〜

わたしは強い愛人を夢見る 相変わらず身勝手なベイコンの独白です。「どんな不幸が彼の目を絶望で満たすのか。わたしは強い愛人を夢見る。宇宙のように無限の男を」彼の目を、というのはジョージの目です。ジョージがベイコンの愛を乞うからうざったくなっている。で、強い男がいいわけね。ベイコンって、天の邪鬼なだけの男ね。相手...