クララ・ツェトキンも
オルガはターの全く知らない名を挙げた。
「クララ・ツェトキンもこの店にきました」
「それはだれ? 音楽家?」
「ドイツの女性解放運動の先駆者です。毎年3月8日、
国際女性デーに、彼女の墓地に花を捧げています」
話が噛み合わない、というより音楽以外の社会問題に
ターは関心ありません。
新世代のオルガから見ると、ターは旧世代に属する。
ターがセバスチャンやアンドリスをそう感じたように
オルガにとってターは古くさい、しかし地位と実力がある
目障りな存在なのです。
自分に好意的なターを、
オルガは利用できるだけ利用しようとします。
〜「TAR ター」〜