認定特定非営利活動法人ReBitは、2021年5月1日（土）〜5月23日（日）に、「精神・発達障害がある性的マイノリティの求職活動に関する調査」を実施し、その速報を発表しました。
精神・発達障害があるLGBTQの現状が明らかに
認定特定非営利活動法人ReBitは、2021年5月1日（土）〜5月23日（日）に、「精神・発達障害がある性的マイノリティの求職活動に関する調査」を実施しました。精神・発達障害がある性的マイノリティ（以下LGBTQ）の求職時や、障害福祉サービス利用に関する現状が明らかになっています。
なお、これらの困難の現状と支援を求める声に応え、ReBitは2021年に、日本初となるLGBTQなど多様性にフレンドリーな就労移行支援事業所「ダイバーシティキャリア」の設立を目指します。
調査の目的と意義
LGBTQは社会の状況などからメンタルヘルスが悪化しやすく、LGBの25%、Tの35%がうつを経験しているとの調査結果もあります（※1）。ReBitでは2013年からLGBTQなどマイノリティ3500名以上へキャリア支援をするなかで、精神・発達障害があるLGBTQからの相談も多く受けています。
一方で、精神・発達障害があるLGBTQは、性のあり方と障害の両方を安心して伝えられる場が少なく、困りごとの根幹を相談できなかったり、働く上での不安がさらに大きくなったり、医療・福祉へのアクセスに障壁が生じてしまうことがあります。
本調査は、精神・発達障害があるLGBTQの求職活動の現状を明らかにすることで、職場や行政・福祉サービスなどでの支援体制が改善される一助となることを願い、実施されました。
※１：特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター（2015）「LGBTに関する職場環境アンケート」
調査結果の速報
ReBitがインターネットで実施した「精神・発達障害がある性的マイノリティの求職活動に関する調査」の回答者の年代・状況・セクシュアリティや障害の分布は、下記の通りです。
・年代
10代 ： 4.9％
20代 ：49.5％
30代 ：27.7％
40代 ：11.7％
50代～： 6.3％
・性的指向・性自認
LGBほか：51.5％
LGBほか、かつT：29.1％
T：19.4％
・求職時の障害の状況
精神障害：53.4％
発達障害：55.8％
身体障害：2.9％
知的障害：2.4％
精神科通院していたが診断名なし：9.4％
答えたくない：4.4％
その他：5.8％
調査結果のポイント5つ
アンケート調査から見えてきた、精神・発達障害があるLGBTQが求職時に抱える不安や困難は、次の5つのポイントにまとめられました。
1．求職時、性的マイノリティかつ障害があることに由来した不安や困難が多い
精神・発達障害があるLGBTQの92.5%が、求職活動やキャリア形成について、性のあり方や障害に由来した不安や困難を経験していました。上位には次のような項目が挙げられました。
・各企業に性のあり方や障害への理解や、安全に働ける環境があるか分からず不安だった（54.5%）
・性的マイノリティかつ障害がある社会人のロールモデルがいなかった、もしくは少なく不安だった（53.5%）、
・性のあり方と障害の両方を開示し、相談できる人・場がなかった、もしくは少なかった（50.8%）
・性的マイノリティかつ障害があるため、差別的言動やハラスメントを受けるかもしれないと不安だった（43.9%）
・求職活動で性のあり方と障害の両方を伝えたら、合否に影響するかもしれないと不安だった（38.0%）
2．面接など選考時の、困難やハラスメント経験が多い
精神・発達障害があるLGBTQの88.2%が、面接などの選考時にのあり方や障害に由来した困難やハラスメントを経験していました。性のあり方に由来した困難やハラスメントを経験していた回答者は66.3%、具体的な困難には次のようなものが挙げられています。
・選考時に、性のあり方を伝えられなかった・隠さなくてはならず困った（32.1%）
・人事や面接官から、性的マイノリティでないことを前提とした質問や発言を受けた（23.5%）
・性のあり方に関連し、職場での不安や望む対応を、人事等に伝えられず困った（21.4%）
障害に由来した困難やハラスメントを経験していた回答者は82.9%。その具体的な困難状況は次の通りです。
・選考時に障害があることを伝えるべきか、どの範囲にすべきか困った（41.7%）
・障害者雇用か一般雇用かどちらで求職活動をすべきか分からず困った（35.8%）
・障害に関連し、職場での不安や望む対応を人事等に伝えられず困った（29.9%）
性のあり方、精神・発達障害に由来した困難のいずれも、隠さなくてはならないことや開示範囲についての困難や、働く上で必要な対応を伝えられないこと、人事や面接官の無理解が上位となっています。
4．性のあり方かつ障害を開示して、キャリア相談をしづらい
精神・発達障害があるLGBTQの72.2%が「求職時、性のあり方も障害も両方を開示してキャリアについて相談した経験がない」と回答。「相談した経験がある」と答えた21.9%を大幅に上回りました。
特に、福祉関係者、ハローワーク等の公共の相談窓口、ケースワーカー等の行政職員の公的な支援サービスに、両方を開示し相談した回答者は、僅か11.8%でした。
相談しなかった理由としては
・どこに相談をしたらいいかわからなかった（56.0%）
・開示したら、求職活動を進める上で不利になるかもしれないと思った（50.7%）
・開示したら、差別的言動やハラスメントを受けるかもしれないと思った（44.0%）
といった、安心して相談できる場所の不足や、相談した結果が差別やハラスメントにつながることへの恐れが挙げられました。
5．行政・福祉サービスが利用しづらい
障害や就労に関する行政・福祉サービスの利用経験があるLGBTQのうち76.8%が、行政・福祉サービス利用における不安や困難を経験していました。なお、困難の詳細として次のような回答が集まっています。
・性のあり方に関連し、どこだったら安心して利用できるかわからなかった（48.4%）
・性のあり方を伝えたら、利用を断られたり、不利な対応やハラスメントを受けるかもしれないと思った（30.5%）
・支援者・職員が、性のあり方に関する知識や理解がなくて困った（29.0%）
・利用者から、性的マイノリティでないことを前提とした質問や発言を受けた（31.7%）
安心して利用できる行政・福祉サービスがわからない、性のあり方を伝えたら利用を断られるのでは、といった利用に関する不安や、支援者・職員や他利用者の無理解や否定的言動が挙げられています。
調査についての考察
調査結果を全体的に捉えると、次の2点が言えます。
1．精神・発達障害があるLGBTQは、求職時における困難が多いが、相談しづらいことからも可視化しづらい
精神・発達障害があるLGBTQは、求職時の不安・困難がより多層化している様子が窺えました。その一方、不安・困難を開示しておらず、そもそも相談先につながれていません。
自身の存在や困りごとを「言えないこと」が社会的に「いないこと」とならないよう、支援ニーズや現状を継続的に可視化し、社会で議論を深めていく必要があります。
2．精神・発達障害があるLGBTQの困難解消には、企業や支援職への理解促進や支援体制構築が必要
LGBTQが社会のセーフティネットからこぼれ落ちてしまっている、喫緊の課題を浮き彫りになっています。困難解消のために、人事・面接官の理解促進や職場環境整備の促進など企業の取り組みが、また、行政・支援職の理解促進や連携が求められます。
今回の調査についての詳細な報告が、オンラインで下期の日程で行われます。
日時：2021年7月10日（土）19時〜20時
配信：認定特定非営利活動法人ReBit YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC2vXCRaNmWDg_z7OiG896LA
内容：
・代表理事による調査報告
・ダイバーシティキャリアのサービス管理責任者による事業所説明
精神・発達障害がある性的マイノリティの求職活動に関する調査
【実施期間】
2021年5月1日（土）〜5月23日（日）
【実施場所】
インターネット
【回答者数】
260名（有効回答数206名）
【オンライン報告会】
2021年7月10日（土）19時〜20時
◇ReBit YouTubeチャンネル ： https://www.youtube.com/channel/UC2vXCRaNmWDg_z7OiG896LA
【主催】
認定特定非営利活動法人ReBit
◇公式webサイト ： http://rebitlgbt.org
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