お母さん、オッパイがほしいの
回想場面です。
中学生の制服を着たリンが
「お母さん、オッパイがほしいの」と母親に訴える。
フミコ、驚かず「そうだよね。リンちゃん、女の子だものね」
自分のセクシュアリティを持て余し、さめざめと泣く息子に
「泣かなくていいの。何も悪くないのだから」
いいお母さんね。口は悪いけど。
荻上監督はリンコの家庭に触れていませんが、母親と二人暮しと
思えます。父親は登場しないのです。離婚か死別かわかりません、
でも離婚なら、リンコの扱いで夫と食い違いがあったのかもしれない。
リンコの、後でわかりますが、心のひだに手がとどくような感性は、
精神的にトラブルのなかった環境では育まれにくいと思えるのです。
肉体的にも、精神的にも、社会的にも複雑な要素を身につけつつ、
人となったマイノリティを描くタッチが、本作はとても叙情的です。