ローズマリー・デウィット

真面目な話がある

〜「グッバイ、リチャード」(10)〜

  真面目な話がある   「真面目な話がある」とリチャードが切り出す。 「ヘンリー(学長)とは好きにやっていい。俺も自由にさせてもらう。 今までいい夫を演じてきたが、もう終わりだ。 この悲劇的な結婚と向き合う時が来た。お互い、好きな相手とやろう」 妻はまだ夫の余...

こんな場所で死にたくない

〜「グッバイ、リチャード」(8)〜

  こんな場所で死にたくない   リチャードは続ける。 「俺はこんな場所で死にたくない。1人静かに死なせてくれ。 ピーター、言葉を失い、親友の手をヒシ。 「リチャード!」 「…手をどけてくれ」 「タバコは?」 「吸わない。吸わなかった。今後は吸うこと...

文学史に残る名作を書く

〜「グッバイ、リチャード」(7)〜

  文学史に残る名作を書く   来学期は研究休暇を取ると、リチャードが親友のピーターに言った。 「1年半前に申請しないとダメだよ。休暇を取ってどうする」 「アメリカ文学史に残る名作を書く」 そんな時間があるとは思えない。 疑わしそうなピーターに真実を告げる。 ...

出ていってくれ

〜「グッバイ、リチャード」(6)〜

  出ていってくれ   リチャードは学生たちに言った。 「この講義に興味のない人は出ていってくれ。自動的にCをやる。 文学でなく経営学を学びたい人も出ていってくれ。 今はいているのがスウェットパンツの人、 紐付きズボンの人も出ていってくれ。 次がいちばん大...

チクショー、バカ野郎!

〜「グッバイ、リチャード」(2)〜

  チクショー、バカ野郎!   リチャードは大学構内の池にジャブジャブ、 天に向かって「チクショー、バカ野郎!」。 となりには白鳥が優雅な姿を水に浮かべている。 裕福で順風満帆の生活はあと半年でピリオド。 何でオレをそんな目に合わせる。呪いたくもなります。 ...

ステージ4の肺ガンです

〜「グッバイ、リチャード」(1)〜

  ステージ4の肺ガンです   ニューイングランドの名門大学で英文学を教えるリチャードは終身教授。 真面目一筋に勤めてきた。ある日「ステージ4の肺ガン」宣告を受ける。 「発見が遅かったので脊椎と副腎に転移の疑いがあります。 大学とご家族に知らせてください」 「残...