生まれつきの才能ね
テルマが警官に銃を突きつけていう。
「奥さんを大事にしなさいよ。大事にしないと私みたいになるわよ。
こんなことができるなんて自分でも不思議だけど、亭主を見れば納得するわ。
ルイーズ、ラジオを撃って…警察の無線を撃つのよ、バカね」
テルマは警官をトランクに押し込め、空気穴を二つ、撃ちぬき逃走します。
「うまくいったわ。生まれつきの才能ね」「天才よ」
二人の気分はますます充実してくる。
しかし心のどこかでは自分たちが終局に向かっている予感がしています。
リドリー・スコットが映すのは虚しいほど何もないアメリカ中西部の大地。
まっしぐらに走る車は、あたかも死に場所を求めているように見えるのです。