マルティーヌ・シュヴァリエ

荷物は少なくていい

〜 「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」42

荷物は少なくていい     追手が来ないうちに旅立とう。 車からマドを助けて降りながら 「荷物は少なくていい。お金と衣類を。 残りはイタリアで」とニナ。 部屋を開けると散乱していた。もしや。 ハッ。お金を入れていた箱を開けると空っぽ。 やられた。...

ええ、もちろん…

〜 「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」41

ええ、もちろん…     古い友人としてニナは面会を求める。 「今、お母様が先生と面談中です」 医師がアンヌに説明している。 「ここに置くのが一番です。血圧が高いし」と懸念を述べる。 アンヌは早足で庭を横切る母親とニナが見えた。 母は脱走するつもりだ。...

そちらのホームの名は?

〜 「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」40

そちらのホームの名は?     レクリエーションルームでビンゴに興じる入居者。 マドは抜け出し、壁を伝い歩きして電話にたどり着く。 ダイヤルを回す。 ニナが受けた。相手は無言。マドだ。 人が出て「失礼しました。入居者が勝手に電話して」 「そちらのホーム...

彼女を思っている?

〜 「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」39

彼女を思っている?     母親を入所させたものの、アンヌは気がとがめていた。 母親の気持ちを無視しているからだ。 「彼女を思っている?」と母にきく。マドは無言。 これでよかったのか。 明らかに症状は悪化した。 「薬で眠らせるだけで治療になるの?」 ...

真実を打ち明けたいの

〜 「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」38

真実を打ち明けたいの     アンヌと弟はニナを招き入れず窓越しの話だ。 「真実を打ち明けたいの。 お母さんは私と一緒に町を出るつもりだった。 あなたたちのお父さんを愛していなかった。 彼女の最愛の恋人は私よ」 「帰ってくれ。警察を呼ぶぞ」 犯罪...

あのアパートには戻せないの

〜 「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」37

あのアパートには戻せないの     アンヌと弟がマドの入所先を決めたが 「あの施設には置けないよ」 「ママのためよ」 「別の介護士を探せよ」 弟は自分が介護するのではないから気楽だ。 「あのアパートには戻せないの」 「何があった?」 アンヌ...

サービス料?冗談でしょ

〜 「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」36

サービス料?冗談でしょ     すっかり気落ちしているニナに第二波が。 訪ねてきたのがミュリエルとその息子だ。 「お袋がクビになって困っている」 ついては「サービス料を払ってくれ」 「サービス料? 冗談でしょ」 息子というのが見るからに人相の悪い男で ...

出てって!

〜 「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」34

出てって!     ニナは夜中、マドのベッドに来て添い寝した。 そのまま眠ってしまった。 翌朝、目を覚ましたアンヌ。母の部屋にニナが一緒に眠っている。 これは…やっぱりそういうことか。 アンヌは叫んだ「出てって!」 〜「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」〜 ...