ウィリアム・モーズリー

マルガリータを

〜「マルガリータで乾杯を」㉛〜

  マルガリータを   「今日はデートなの」そう言ってライラは新しい髪型で美容院を出た。 カフェに行く。 ウェイターが注文を聞く。「マルガリータを。ストローで」 ハヌムと初めて一緒に飲んだマルガリータ。 ライラは自分専用のボトルにマルガリータを移し、 ストローで一口。目の前の...

失われてしまった私の一部

〜「マルガリータで乾杯を」㉚〜

  失われてしまった私の一部   母親が亡くなりました。 「失われてしまった私の一部」とは 母親のでしょうか、アメリカに一人で去ったハヌムでしょうか。 取り返しはつかない。 ライラはアメリカに帰るでしょうか。インドに残るのでしょうか。 どっちとも取れます。帰ると思いますけどね...

私を利用したのね

〜「マルガリータで乾杯を」㉙〜

  私を利用したのね   「私を利用したのね。世話をさせようと。寂しさを埋めるため? 彼氏ができるまでのツナギ?」 「ちがうわ、ハヌム。それはあんまりよ」 「あんまりとは一体、どっちの言うことよ」もっともです。 「なぜ隠していたの」 「あなたを失いたくなかった」 「じゃ、今...

許してハヌム

〜「マルガリータで乾杯を」㉘〜

  許してハヌム   ライラはもう一つ打ち明けねばならないことがありました。 ジャレッドとの関係です。 「許してハヌム。ニューヨークで、ジャレッドの家でセックスしたの」 「私がいたのに? なぜそんな」 「一度きりよ。何も考えなかったの。反省している。魔が差したの」 ライラは正...

母さんは必ず病気に勝つとも

〜「マルガリータで乾杯を」㉖〜

  母さんは必ず病気に勝つとも   母親が入院した。 隠しておけないと知った父親は結腸ガンが再発していたことを告げる。 狼狽する娘に「母さんは戦う女だ。必ず病気に勝つとも」 母親が最愛の娘に願うことはなに? 母親は社会で大人の女として生きていける強さを 自分に与えたかったので...

今さら、何なの?

〜「マルガリータで乾杯を」㉕〜

  今さら、何なの?   娘が同性愛者。 「あなたはフツーじゃない」とママは苦しそうだ。 ライラは勇気を奮い起こします。 「母さん、私は人生でずっとそう言われてきた。 今さら何なの?」 思うように動かない口で、叫ぶ。 ライラが初めて障がい者である自分のことを率直に言うシーン...

お母さん、私バイなの

〜「マルガリータで乾杯を」㉓〜

  お母さん、私バイなの   ライラは思い切ってママに話しかけた。 「お母さん、私バイなの」 ママは平然。「私だってバイ(メイド)よ。 どんなに教育を受けてもインドの男は女をメイド扱い。 倒産を見て。どんな時でも手作りの料理を望む。 たまには洗濯でもさせてみたいわ」 ママが...

俺は昔から知ってる

〜「マルガリータで乾杯を」㉒〜

  俺は昔から知ってる   「俺は昔から知っている。おばさんが知ったら大爆発だ」と言うのは ライラの元カレ、ドゥルブ。 「俺に黙っていくのか、ビッチ」と言ったあの子ね。 おばさんとはライラのママ。 同性愛者がインドでどう見られているか、彼はわかっているから 両親とくに母親にわ...