死ぬのを待っていた

死ぬのを待っていた

 

父親の遺した時計を息子が欲しいと言うので

「持っていけば。あの時計にはうんざり」

夫で苦労したマドがいう。

その言葉尻を捉え(うんざりしたのは)

「パパにもだろ。死ぬのを待っていたのだろ」。

いちいち母親に突っかかる。

こんな息子に気兼ねせずさっさとローマに行けばいいのに。

でも浮気の負い目のあるマドはそれができない。

母親の実情も解ろうとしないで根に持つ、しつこい男です。

 

 

〜「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」〜

 

bn_charm