モナ・クリステンセン

私が愛せる人よ

〜彼女の名は「ビリティス」⑯〜

私が愛せる人よ   ビリティスが愛を託したのはルカでした。 「私が愛せる人よ」そういってビリティスはルカの手をメリッサに委ねる。 こうしてビリティスの夏は終わりました。メリッサの夏もまた。 学校に戻り、だれも休暇から帰っていない部屋で ビリティスはひとり微笑む。 美しい追憶の夏だけが通...

彼はだれのものにもならない

〜彼女の名は「ビリティス」⑮〜

彼はだれのものにもならない   ニキアスはメリッサにダンスを申し込む。 「踊っていましたね」「ええ。さびしくなって」 ニキアスは静かに踊る。そして離れる。 「応えられない」とつぶやく。 「おいで」メリッサはビリティスを呼び、踊りながらささやく。 「残念だけど、ニキアスは私たちと全然ちが...
火

まず君を消す

〜彼女の名は「ビリティス」⑭〜

まず君を消す   愛人候補や知人、友人に招待状を送ったビリティス。 パーティの日に彼らが集う。 「メリッサは素敵ね。でも何のパーティ?」 女友だちは首をかしげる。 ニキアスが来た。踊っているメリッサを見つめる。 (どう?)というふうにビリティスが近づく。 「彼女に惚れたらまず君を消す...

私を好きになったせいね

〜彼女の名は「ビリティス」⑬〜

私を好きになったせいね   ビリティスはルカに愛人候補の写真を撮らせ、20枚の写真をメリッサに 見せる。メリッサは番号のついた写真を「1」「2」「3」、 一枚一枚脇に退けていきます。 「全員ダメなの?」ビリティスが心配げに訊く。 「19」で手が止まった。ニキアスだ。 「その人はダメよ。...

どんな人でも耐えられない

〜彼女の名は「ビリティス」⑫〜

どんな人でも耐えられない   愛人探しとはいうものの、ビリティスは苦しむ。 メリッサが男性といることを想像すると 「どんな人でも耐えられない。ピエールはサイテーよ」 かろうじて、自分が好きな男性とならうまくいくかも、と考える。 自分の恋が破綻した後の心配までするビリティスを えらいとい...

愛人を探しているの

〜彼女の名は「ビリティス」⑪〜

愛人を探しているの   メリッサにふさわしく、自分のメガネにかなう男はいないか。 街なかを歩きながらビリティスは男たちを眺める。 ニキアスという男性に近づく。扮するのはマシュー・カリエール。 「テルレスの青春」で超絶美少年デビュー。本作の3年後 「エゴン・シーレ/愛と陶酔に日々」で夭折し...

探してくる。男の人を

〜彼女の名は「ビリティス」⑩〜

探してくる。男の人を   抱いていたメリッサの膝を離し、ビリティスはスタスタ出て行こうとする。 「探してくる」「何を?」「男の人を」「バカなことを」 「そういう私が好きなのでしょ」 やけくそみたいですが、ビリティスにすると、メリッサと一緒にいるのは、 せめて自分の気にいった男であってほし...

でも一度きりよ

〜彼女の名は「ビリティス」⑨〜

でも一度きりよ   「私を幸せにできるのはあなただけよ」とまで言うビリティスに メリッサは引導を渡します。 「よく聞いて。とても心地よかったし少しも後悔していないわ。 でも一度きりよ」 「そうなの?」「もう二度とやらない」「あなたがイヤでも私はやりたい」 「言ったでしょ。ダメなの」「私...

「こんな感じ?」「ええ」

〜彼女の名は「ビリティス」⑧〜

「こんな感じ?」「ええ」   舌を入れた後はどうするのかと、ビリティスがしつこく訊く。 「今にわかるわ」とメリッサは言うが引き下がらない。 「こんな感じ?」「ええ」 「今夜もやるの?」「そうよ」 夫婦だから当然の行為なのですが、ビリティスはなぜ大嫌いなピエールを メリッサが受け入れるの...

珍しいコーヒーの飲み方ね

〜彼女の名は「ビリティス」⑦〜

珍しいコーヒーの飲み方ね   コーヒーカップを持ったまま、メリッサの前を行ったり来たりしている ビリティスに言う、メリッサの嫌味。 「うろちょろしないで。座って」 ピエール「何か頼みごとがあるのだろ。俺がジャマなのか」 「うん」とビリティス。あんまりハッキリ言われピエールは退散する。 ...