監督 中川龍太郎

真奈の部屋、落ち着く

〜 「やがて海へと届く」10〜

真奈の部屋、落ち着く   真奈にペデュキアをしてやりながら 「真奈は私に何も強制しないのね。 みんな知らないうちにいろんなこと、人に押し付けている」 「すみれも私に何も強制しないよ」 「真奈の部屋、落ち着く。海の底にいるみたい」 就活の話がでた。 「本社が京都な...

何も言わずにしばらく泊めて

〜 「やがて海へと届く」9〜

何も言わずにしばらく泊めて   雨の日だった。 「お待たせ」と真奈が待ち合わせ場所に迎えにきた。 「来てくれたんだ」とすみれ。大きなバッグを持っている。 「何も言わずにしばらく泊めて。いいかな?」 「いいよ」快く真奈は承知する。 「2ヶ月ぶりだね。こんなに会わなかった...

安心て、なんだろね

〜 「やがて海へと届く」8〜

安心て、なんだろね   桜の季節だった。高台からは水平線まで何もない海が見える。 真奈「何、考えてた?」 すみれ「カメラ持っているとなんで落ち着くのだろう。 私たちには世界の片面しか見えていないと思う」 「どういうこと?」 「うまく言えない」 「難しいこと考える...

つまらない上っ面のところで

〜 「やがて海へと届く」7〜

つまらない上っ面のところで   すみれと真奈はどこかに行くらしい。 ガラ空きのローカル線で、すみれが真奈を撮っている。 元カレを真奈が 「つまらない上っ面のところで好きだったんだね」と 他人事みたいに言っている。 すみれはしっかり聞いている様子でもなく、 さかん...

「私はすみれ」「私は真奈」

〜 「やがて海へと届く」6〜

「私はすみれ」「私は真奈」   「いやな気分にさせたらごめんね」とすみれは謝り、 「あの店のから揚げ、サイテーね。 何かおいしいもの、食べに行かない?」と誘った。 二人は向き合い「私はすみれ」「私は真奈」 ここから物語は始まりました。   〜「やがて海へと...

ごめん、この子と付き合ってるの

〜 「やがて海へと届く」5〜

ごめん、この子と付き合ってるの   席に戻る。 「彼氏、いる? いない? まだ? じゃよろしくお願いしま〜す」 言い争ってからかう男子らに、 真奈は対応がわからない。 ぼんやりしているといきなりすみれがキスした。 「ごめん、私、この子と付き合ってるの」 そ...

噛まないでね

〜 「やがて海へと届く」4〜

噛まないでね   イッキ飲みで気分が悪くなった真奈がトイレに行く。 苦しいのだけど、吐けない。 すみれが気遣って入ってくる。彼女はそれとなく 真奈の不慣れな様子に気を付けていた。 「吐けないの?」すみれは手早く真奈の髪をショウショでまとめ うつむかせると「噛まないでね...

私もいいですか?

〜 「やがて海へと届く」3〜

私もいいですか?   真奈とすみれの出会いは大学の新入生入部歓迎会だ。 プラカードやビラを手にした在学生が 口々に勧誘する。真奈はうろたえていた。そこへ 「私もいいですか、新入生です」と割って入ったのがすみれだ。 真奈はホッとした。 おっとりした真奈とシャキシャキした...

すみれの部屋は?

〜 「やがて海へと届く」2〜

すみれの部屋は?   すみれと遠野が暮らしていたアパートに来る。 「すみれの部屋は?」と真奈が訊く。 すでに遠野が整理し、部屋は空っぽ。 隅にあった段ボールに、 猫のポーチ、すみれ愛用のビデオカメラがあった。 すみれはここにいたんだ。残った品の一つ一つに触れる。 ...