監督 中川龍太郎

何度も探しに行ったんです

〜 「やがて海へと届く」21〜

何度も探しに行ったんです   楢原の代わりにきたマネージャーは、 楢原のコレクションであるCDを処分し 「有線を流せばいい。無駄なことはなくしましょう」 真奈はそんな感性にしっくりこない。ストレスがたまる。 シェフの国木田が 「有休、たまってるだろ。どっか行きたいとこ...

声を聴きたかっただけ

〜 「やがて海へと届く」20〜

声を聴きたかっただけ   真奈が留守電を再生する。 「真奈、久しぶり。元気にしてる? 声が聴きたかっただけ。 また電話するわ」ツー。 「真奈、元気? 仕事はどう?」 「元気にしてる? たまには電話してね」 留守電はいつも短かった。 すみれは自分のことを話さない子...

楢原さんが亡くなった

〜 「やがて海へと届く」19〜

楢原さんが亡くなった   真奈の職場であるレストランの責任者、楢原さんが自殺した。 次席であるシェフの国木田が警察で事情聴取を受けた。 風呂場で首を攣ったそうだ。 「楢原さんは経営企画部で活躍していたけど、 上司と意見が合わず飛ばされたらしい」 彼は真奈に理解があった...

婚約した人ってどんな人?

〜 「やがて海へと届く」18〜

婚約した人ってどんな人?   真奈が遠野に訊く。 「婚約した人って、どんな人?」 「普通の人だよ」 「すみれは普通じゃなかった」 「意外と普通だったかもしれないよ」 「ですよね、そっちの方がすみれのこと、よく知っていますものね」 どことなくケンがあります。 ...

今日でサヨナラです

〜 「やがて海へと届く」17〜

今日でサヨナラです   すみれのカメラを再生した。 真奈の部屋が映り 「1年ちょっとお世話になった部屋に、今日でサヨナラです」 すみれは引っ越し、遠野くんと住むことにした。 トラックの荷台に真奈とすみれが、端っこ同士に座っている。 真奈は横を向いたきりだ。機嫌が悪そう...

一緒のところにとどまっている

〜 「やがて海へと届く」16〜

一緒のところにとどまっている   遠野くんはこうも言う。 「君にとっては、 すみれはずっと一緒のところにとどまっているでしょ」 真奈はプイと車を降りる。 遠野に図星をつかれたのだ。 遠野くんがいちばんよくわかっていた。 彼はすみれを好きだったけど、すみれはどこか...

何か終わっちゃう気がするのだろ

〜 「やがて海へと届く」15〜

何か終わっちゃう気がするのだろ   すみれの実家からの帰り道だ。 「お母さん、カメラは受け取らなかった。 中を見たら、何か終わっちゃう気がするのだろ」 「遠野くん、見たの?」 「俺にも勇気がない。 すみれは君に持っていてもらいたい気がする」 そして唐突に「俺、婚...

昔から青が好きだった

〜 「やがて海へと届く」14〜

昔から青が好きだった   遺品の中にあったブルーのワンピース。 「昔から青が好きだった。着てみない? 真奈ちゃん。 よく似合ってる」 「ありがとう」 でも真奈は嬉しそうではなく、のぞいた遠野に 「着替えるから出てって」そっけなくいい さっさと着替える。 す...

結局戻ってこなかったけど

〜 「やがて海へと届く」13〜

結局戻ってこなかったけど   すみれの実家に行く。仏壇にすみれの写真がある。 母親「中学の時、あの子、私の顔をじっと見て、 お母さんはいつも私かお父さんにくっつこうとする、なんて。 結局戻ってこなかったけど、そうなって 元の親子に戻れたのかな、と思うのよね」 やっぱり...

いつもので、いいでしょ

〜 「やがて海へと届く」12〜

いつもので、いいでしょ   学食にすみれと遠野がいて真奈がくる。 「遠野くん」とすみれが紹介する。 「やっぱり何か食べようかな」と真奈が言うので 「頼んでくる。いつもので、いいでしょ」 すみれが立ち上がり、真奈と遠野が二人だけになる。 特に話題はない。 校庭で遠...