監督 アニエスカ・ホランド

当然さ、理想的な妻だ

〜「太陽と月に背いて」⑨〜

  当然さ、理想的な妻だ   ヴェルレーヌはランボーが止まっている安宿に来ました。 濡れた衣類を乾かします。マチルダを愛しているのかという質問に 「当然だろ。理想的な妻だ」 その理由は「18歳で美人だ。金もある。子供も産まれる」 「共通の趣味は?」とランボー。 「ない」「知性...

彼の家だろ

〜「太陽と月に背いて」⑧〜

  彼の家だろ   マチルダの父親がヴェルレーヌをとがめます。 「何で他人をこの家に入れた。働いて自分の家くらい持て。 (ランボーに)くすねた物を返せと言え。幸い、彼は出て行ったが」 「何と!」ヴェルレーヌは飛び上がり、脱兎のごとく雨の街へ走りだす。 ランボーは雨の中でベンチに...

私は友達を助けねばならん

〜「太陽と月に背いて」⑦〜

  私は友達を助けねばならん   ヴェルレーヌ邸(正確には妻の邸宅)に泊まったランボーは 書斎の本は盗む、飾り物は壊す、精巧な蝶の剥製はブローチにする… 狼藉の限りです。 彼にのめり込む夫に「彼の世話は他の人に任せた方がいいと思うわ」と妻。 腹のなかを見透かされたヴェルレーヌは...

「僕は涙を流しすぎた」

〜「太陽と月に背いて」⑥〜

  「僕は涙を流しすぎた」   ヴェルレーヌは妻にランボーの詩を読んで聞かせる。 「僕は涙を流しすぎた 悲しい朝を見すぎた」 「私はあなたの詩が好きよ。こんな詩、わからないわ」 マチルダは正直にそう思う。 彼女はランボーが天才かもしれないが、 本質的にアウトサイダーであること...

愛は存在しない

〜「太陽と月に背いて」⑤〜

  愛は存在しない   「愛だと?」ランボーは聞き返します。 「そうだ」「違うな」「どうして?」 「家族や夫婦を結びつけているのは愛じゃない。 愚かさやエゴや恐怖だ。愛は存在しない。 私欲は存在する。利益への執着は存在する。自己満足は存在する。 だが愛は存在しない。再創造が必...

あんたの新作はくだらない

〜「太陽と月に背いて」④〜

  あんたの新作はくだらない   ランボーは辛辣だ。 出版を進めるヴェルレーヌに 「出版はどうでもいい。最大の目的は試作自体だ。あとは雑事さ。 あんたの新作は良くない。くだらない」クソミソです。 「みんな褒めてくれるが」 「ウソの羅列さ」 「真剣に愛している」 ヴェルレー...

天才少年扱いはイヤだから

〜「太陽と月に背いて」③〜

  天才少年扱いはイヤだから   「歳はおいくつかな」と尋ねたヴェルレーヌに「16歳です」 「君が送ってきた詩は21歳にしても見事だが、16歳となれば驚異だ」 ランボーは「天才少年扱いはイヤだから」21歳と書いた、と言います。 早熟であることもさることながら、 その自信満々にヴ...

おはよう、ヴェルレーヌは?

〜「太陽と月に背いて」➁〜

  おはよう、ヴェルレーヌは?   ヴェルレーヌの邸宅、と言っても彼は妻の両親の家の居候です。 ランボーから送られてきた詩に感動したヴェルレーヌがパリに招いた。 やってきた若者は繊細な詩人のイメージとはほど遠かった。 朝食の席に案内も乞わず現れ「おはよう」 迎えたのはヴェルレー...

彼は未来の声です

〜「太陽と月に背いて」①〜

  彼は未来の声です   アルチュール・ランボーの妹イザベルがヴェルレーヌに 「兄の原稿をお持ちなら私どもにお預けください」と頼んでいる。 無許可でランボーの詩集が出版されていると訴えている。 ヴェルレーヌは「彼が有名になると我々の影が薄くなりました。 古い韻律はもう流行りませ...