ロマーヌ・ボーランジェ

死後も毎夜彼と会っている

〜「太陽と月に背いて」(57)〜

  死後も毎夜彼と会っている   「ランボーの死後も毎夜彼と会っている。 私の大きく、輝かしい罪と。 私たちは幸福だった」 彼らの愛。 打算があり、駆け引きがあり、サド的なランボーに仕えるがごとく 彼を愛したヴェルレーヌ。 ヴェルレーヌのその後は決し...

アブサン2杯

〜「太陽と月に背いて」(56)〜

  アブサン2杯   ランボーの妹イザベラが去ったあと、ヴェルレーヌはしばらく1人で 座っていたが、おもむろに「アブサン2杯」を注文した。 ウェイターが緑色のアブサンのグラスをテーブルに置いた。 「俺を愛している?」 在りし日のランボーのリフレインが聞こえる。 ...

大詩人にお会いできて光栄です

〜「太陽と月に背いて」(55)〜

  大詩人にお会いできて光栄です   用件を言い終えたイザベルは 「大詩人にお会いできて光栄です」 ヴェルレーヌはパリの高名な詩人となっていた。 「兄の原稿を、この住所にお送りください」と イザベルが一枚の紙片を渡す。 ヴェルレーヌは礼儀正しく彼女を送り出...

もう切らせないでくれ

〜「太陽と月に背いて」(54)〜

  もう切らせないでくれ   ランボーが家にいたのは1か月だった。 「イザベル、頼みがある。もう切らせないでくれ」と妹に懇願している。 痛みのあまり、ベッドから転げ落ちたランボーの脚は1本だ。 それでも彼は家をでたがった。 「太陽の方へ帰ると。太陽が治してくれる...

脚を切断しました

〜「太陽と月に背いて」(53)〜

  脚を切断しました   ヴェルレーヌは最も聞きたかったことを訊く。 「彼は試作を?」 イザベルが遅疑なく「いいえ」 「兄は海岸に着くとマルセイユの病院へ。悪性が疑われ脚を切断しました」 ヴェルレーヌ沈黙。 ランボーは実家に戻り、母親と妹の介護を受けます。...

10年間アビシニアで過ごしました

〜「太陽と月に背いて」(52)〜

  10年間アビシニアで過ごしました   「兄は10年間、アビシニアで過ごしました。 白人のいない土地で交易を開いていました。 医者もいませんでした。仕事を続け、やがて痛みが耐えがたくなり 兄は台に乗り10人にかつがれ海岸に運ばれた。2週間以上の旅でした」 砂漠...

俺は残酷で怠惰な男になる

〜「太陽と月に背いて」㊿〜

  俺は残酷で怠惰な男になる   ここはパリ。ヴェルレーヌはランボーの妹イザベルに アフリカから届いたランボーの手紙を読んでいる。 「俺は鉄の脚をつけて帰る。肌を黒くし、目をギラギラさせて。 金持ちになって。残酷で怠惰な男になる。俺は救われる」 観念(詩)を捨て...