ロバート・ミッチャム

マーガレットか、久しぶりだな

〜「秘密の儀式」⑩〜

  マーガレットか、久しぶりだな   窓の外から、やってきたアルバート叔父がレオノーラに声をかける。 カーテン越しだからはっきりとわかりません。 レオノーラを亡くなったチェンチの母、マーガレットだと思っている。 「家に入れてくれ」 レオノーラは出てこない。「大学で会おう」 そ...

マミーは死んだと思っているわ

〜「秘密の儀式」⑨〜

  マミーは死んだと思っているわ   チェンチも叔母二人をバカにしています。 「マミーは死んだと思っているわ」 事実なのですが、チェチンにとって母親は生きている。 心の中で? いいえ、目の前にいるレオノーラがマミーなのです。 パトリシア・ハイスミスが 人間にとって真の現実とは...

ハンナとヒルダ叔母さんよ

〜「秘密の儀式」⑧〜

  ハンナとヒルダ叔母さんよ   ハンナとヒルダ、二人の叔母が来訪する。 レオノーラは庭に出て窓から様子を見る。 「お母さんは亡くなったの。探し歩いても無駄よ」と叔母たち。 「母は庭でバラを切っているわ」とチェンチ。 「いつもの気味悪い冗談ね」 「義父のアルバートは逮捕された...

お手入れしなきゃ

〜「秘密の儀式」⑦〜

  お手入れしなきゃ   レオノーラが出かけるというので、「お手入れしなきゃ」 チェンチが髪を梳いてやる。 「こんなに太っちゃって」鏡を見ながらリズが嘆く。 あれほど美貌を謳われたリズですが、実はコンプレックスまみれでした。 頭と顔が大きい、手足が短い、太りやすい、胸が大きすぎ...

席を離れちゃダメ

〜「秘密の儀式」⑥〜

  席を離れちゃダメ   チェンチの現実と妄想が入り混じるシーン。 ミア・ファーローの独壇場です。 誰もいない部屋、チェンチの独り言をレオノーラが耳にとめる。 誰も座っていない椅子に「し〜。マミーが寝ているの。断言するわ。 マミーの心を傷つけることは絶対にしないって。 席を離...

一緒に寝てもいい?

〜「秘密の儀式」⑤〜

  一緒に寝てもいい?   「買い物に行っても病院に行っても、ママは必ず戻ってきてくれた。 病状が進んで強風が吹いていたあの日、以外は」 母親は病院で帰らぬ人となったのでしょう。 チェチンの独り言のような話を継ぎ合わせ、身の上を想像するレオノーラ。 経済的にはともかく、母親を失...

一緒に住みましょうか

〜「秘密の儀式」④〜

  一緒に住みましょうか   部分的なチェンチの話から、幸せとは言えない娘だとレオノーラは察する。 「可哀想な子ね」「自分でもわからない」 「一緒に住みましょうか。ずっと面倒見るわ」 レオノーラは貧しい娼婦ですが卑しい女ではない。心には愛がある。 ミア・ファーローは自伝「去りゆ...

あなたが作ったの?

〜「秘密の儀式」③〜

  あなたが作ったの?   すっかり平らげてゲフッ。 「あ〜、美味しかった。あなたが作ったの?」 レオノーラはやっと落ち着いて話しかけます。 「あなた一人? 使用人は?」 「忘れちゃったの? 自分で解雇したのに。乳母も料理人も」 広大な屋敷に、自分をマミーと呼ぶ、頭のおかしい...

朝食はいかが?

〜「秘密の儀式」②〜

  朝食はいかが?   見知らぬ妙な娘は豪邸にレオノーラを招じ入れる。 好奇心と親しみと入り混じった瞳で自分を見つめるチェンチに レオノーラはイライラし、「口はきけないの?」 意外にも娘はやさしい声で「朝食はいかが?」 「いただくわ」即答するリズがいいですね。普段、ろくなものを...

マミー

〜「秘密の儀式」①〜

  マミー   レオノーラ(エリザベス・テイラー)は、娘の墓参りの帰り、バスの中で 見知らぬ娘から「マミー」と声をかけられる。 娘の名はチェンチ(ミア・ファーロー) レオノーラはロンドンの安アパートで一人住まいの娼婦。 娘を自分の不注意から溺死させたことがトラウマになって、 ...