リー・シャオラン

アン、一緒にいると楽しいわ

〜「中国の植物学者の娘たち」(10)〜

  アン、一緒にいると楽しいわ   ひなびた山里をオンボロバスがいく。 アンとリー・ミンが山寺のワン先生を訪ねてきた。 穏やかな丸顔のワン先生。 「標本用のニンジン採りか。こちらは?」とリー・ミンに向く。 「実習生です」とアンが紹介する。切り立った山の中腹に採取...

アン、きれいよ

〜「中国の植物学者の娘たち」(9)〜

  アン、きれいよ   「薬に用いる松ヤニは、色が白くなるまで足で踏んでこねるの」 アンが松ヤニの大きな塊を踏んでいる。 「おできや皮膚の炎症に効果があるわ」 長時間踏み続けている、アンのひたいは汗びっしょり、髪がへばりつき、 胸にも玉汗を滴らせている。 ...

リー君、矢を射る、の「矢」だぞ

〜「中国の植物学者の娘たち」(8)〜

  リー君、矢を射る、の「矢」だぞ   今度はアンの受難だ。「お父さん、朝食よ」 花の世話をしている教授に朝食を運んできた。 「私の朝食は8時でなく7時半だ。それ以外はすることがある。 下げろ。今朝は食べない」 そこをリー・ミンが見ていた。 その夜「おほん...

これはトリカブトだ!

〜「中国の植物学者の娘たち」(6)〜

  これはトリカブトだ!   医学生たちに教授が薬草学の講義をしている。 教授がリー・ミンをよびたて 「私が持ってこいと命じた植物は?」 「カシュウです」 「そうだ。だがこれはトリカブトだ。致死量の毒がある。 お前の目は節穴か。下手すれば死ぬところだ」 ...

楽しく暮らしてもらうわ

〜「中国の植物学者の娘たち」(5)〜

  楽しく暮らしてもらうわ   「リー・ミン、手伝って」 案内されたのはホコリをかぶった物置同然の部屋だ。 アンはテキパキと椅子や家具を片付けた。 「滞在は1ヶ月半だぞ、部屋は必要ない」と教授。 変人ね。人が機嫌よくしていると気にいらないのね。 「楽しく暮...

覚えておけ!

〜「中国の植物学者の娘たち」(3)〜

  覚えておけ!   カゴに入った貝殻みたいなものをガラガラとかき混ぜながら 教授、リー・ミンを見ようともせず 「君は時間の観念がなっていない。昨晩は夜の9時に電話をかけ、 今朝は1時間の遅刻だ。私はもう休憩の時間だ」 リー・ミンは一昼夜汽車に揺られてたどり着い...

今日の作業はなに?

〜「中国の植物学者の娘たち」(2)〜

  今日の作業はなに?   教授は籐椅子にふんぞりかえり、娘に足の爪を切らせている。 足は娘の膝に置いている。 娘がアン。本作のもう一人のヒロインです。 ところでお父さん、あなたのその態度、なに? うちの父だって母にそんなことさせませんでしたよ。 アンには...

院長先生、それじゃ

〜「中国の植物学者の娘たち」(1)〜

  院長先生、それじゃ   二人の女性の愛の物語です。 ヒロインの一人、リー・ミンが唐山児童養護施設を出発するシーンから 始まります。彼女は中国人の父とロシア人の母との混血。 両親は唐山大学の外国語教授で、1976年の地震で共に亡くなった。 孤児となった彼女は養...