マーク・デュプラス

「チャオ」

〜「タリーと私の秘密の時間」㉚〜

  「チャオ」   タリーがマーロのベッドに腰掛けている。 「行かないで」マーロが頼む。 タリーは自分の自己救済願望が生み出したもう一人の自分だと この時点でマーロは気がついています。 「あなたは危機から脱した」とタリー。 「これからどうすれば?」 「やるべきことをやるだけ...

「旧姓は?」「タリーです」

〜「タリーと私の秘密の時間」㉙〜

  「旧姓は?」「タリーです」   マーロは病院にいます。 「奥さまは極度の疲労と睡眠不足です」と女医が夫に告げる。 でもこのおじさん、受け答えがトンチンカンなのだ。 「子供を放置して出かけるとは」女医は聞き咎める。 「放置? あなたが家にいたでしょ」 入院の手続き。「奥さま...

(人魚が近づいてくる)

〜「タリーと私の秘密の時間」㉘〜

  (人魚が近づいてくる)   睡魔に襲われマーロは運転を誤る。 車は川へ真っ逆さま。 車にはマーロが一人。助手席には誰もいません。 タリーは? かすかな意識で首を巡らすと、いつも夢に現れる人魚が、 マーロの未来を象徴する人魚が近づいてくる。 タリーに似た人魚は水中でシート...

「どこ行くの!」「昔の家」

〜「タリーと私の秘密の時間」㉗〜

  「どこ行くの!」「昔の家」   マーロはいきなり人の自転車をつかんで走り出そうとします。 「どこ行くの!」タリーは仰天する。「昔の家!」 やばい。いよいよ辛い現実を突きつけねばならない。 「行ってどうするの?」 「まだヴァイがいる。入れてくれるわ」 タリーは悲しげに言って...

あなたの人生は失敗?

〜「タリーと私の秘密の時間」㉖〜

  あなたの人生は失敗?   「あなたの人生は失敗だった?」 (かもしれない、少なくとも考えていたものとは違った) マーロはそう思っています。でもタリーは言う。 「夢を叶えたでしょ。シンプルな生活が子供たちへの贈り物なの。 毎日起きて同じことをする。あなた自身も、結婚も、家も ...

先に進まなきゃ

〜「タリーと私の秘密の時間」㉕〜

  先に進まなきゃ   「どうして辞めるの?」 「先に進まなきゃ」 「そうよね。計画があるわけね。20代は最高よ。 でもゴミ収集車みたいに30代がやってくる。 その可愛いお尻が垂れて、妊娠と共に足が大きくなる。 その奔放さも見苦しくなってくる」 「怖くないわ」 「マジで怖...

いかなきゃ。もう子守はできない

〜「タリーと私の秘密の時間」㉔〜

  いかなきゃ。もう子守はできない   「話があるの」タリーが生真面目な顔で切り出した。 「いかなきゃ。もう子守はできない」 「ダメよ!」 「辞めるの」 「もう少しいてよ。あなたが必要なの。お願いよ」 「無理なの」 マーロにとってタリーは有能な子守であるだけでなく、よき友だ...

彼女を愛していて、できれば…

〜「タリーと私の秘密の時間」㉓〜

  彼女を愛していて、できれば…   飲みに入ったバーのジュークボックスで、タリーが1曲選んでかける。 「信じられない。これ大好き」マーロの顔が輝く。 「だからかけたの」 「いつもヴァイとこの曲を聴いていた。 彼女とは昔、一緒に住んでいたの。私たちの曲だった。 彼女を愛してい...

そうよ、飲みに行こう

〜「タリーと私の秘密の時間」㉒〜

  そうよ、飲みに行こう   マーロの助言でタリーは気が晴れたのか 「そうよ、飲みに行こう」 「ニューヨークのマンハッタン?」 「ブルックリンにしよう」 またしてもタリーはマーロの心のうちを読むのです。 「ブルックリンは昔、住んでいた町よ。9年間、住んでいた」 マーロにとっ...

彼女とはいろいろあって

〜「タリーと私の秘密の時間」㉑〜

  彼女とはいろいろあって   無遅刻無欠勤のタリーが遅刻しました。 大急ぎで台所に入ってきて「次から絶対遅れないわ」と約束する。 「タリー、休んでいいのよ」とマーロは慰める。 タリーにも休みが必要だ。 「彼女といろいろあって」 同居するガールフレンドとの関係が難しそうだ。 ...