フローリア・シジスモンディ

客のヤジと戦う訓練だ

〜「ランナウェイズ」⑪〜

  客のヤジと戦う訓練だ   「客はお前らのファンじゃない。お前らのサインなど欲しがっていない。 舞台から引きずり降ろそうとする。引くな! やれ! お前たちは死のダンスを見せてやれ! かかれ!」 少年たちが我さきに、ゴミ箱の拾得物をぶつける。 玉ネギ、リンゴ、空き缶、正体不明の...

ロックはタフな音楽だ

〜「ランナウェイズ」⑩〜

  ロックはタフな音楽だ   「ロックはタフな音楽だ。舞台でギターなど弾けると思うな。 このあと、覚悟してかかれ。ベトコン並みに鍛えてやる」 キムは何を覚悟させるのか。コンテナの外では近所の悪ガキたちが ゴミ箱をあさり、捨てられた空き缶などを袋に詰め込んでいる…   ...

ウェイトレスで終わりたくない

〜「ランナウェイズ」⑨〜

  ウェイトレスで終わりたくない   シェリーの姉マリーは、帰宅した妹に 「何、それ、もうスター気取り?」(椅子にふんぞり返っている) 「ウェイトレスで終わりたくない」 ウェイトレスをやっている姉にはクソなまいきに聞こえるが (チェッ)。内心舌打ちしながらも、基本的に妹にやさし...

暗闇に生きる人間のための音楽

〜「ランナウェイズ」⑧〜

  暗闇に生きる人間のための音楽   「ロックンロールは汗臭い男のスポーツだ。 暗闇に生きる人間のための音楽だ」 キムは技術より先にロックのスピリットを教えた。 「うなれ、あえげ!」 シェリーにとってはカルチャーショックだ。 練習後、ジョーンと一緒に帰る。 「門限は?」「な...

歌を作ってやらなきゃ

〜「ランナウェイズ」⑦〜

  歌を作ってやらなきゃ   キムが「何を歌ってくれる?」とシェリーに聞く。 「ペギー・リーのフィームヴァー」 メンバーは苦笑する。 「だれ、それ。たるい曲はやらないんだよ」 「ちがう曲は?」「練習してない」 みな顔を見合わせた。ジョーンが助け舟を出した。 キムにそっと耳打...

君をメンバーにして歴史を作る

〜「ランナウェイズ」⑥〜

  君をメンバーにして歴史を作る   喧騒のバーの片隅にいた暗い女の子だ。 人を寄せ付けないものがある。 「君は?」「シェリー」「歌は歌える?」「ボウイの口パクで優勝した」 「君をメンバーにして歴史を作る。何か一つ練習してこい」 ダコタはシェーンの実年齢と違わない歳で ハリウ...

お前らは牙を剥け

〜「ランナウェイズ」⑤〜

  お前らは牙を剥け   「いま男どもは口紅をさして舐め合いだ。お前らは“汚れ”でいけ。 牙を剥け」 男の影に隠れた存在ではない、時代を引き裂く激しさが欲しい。 ジョーンもサンディも10代、少女といっていい年齢だ。 キムの意図を飲み込むのも早かった。 ドラムのサンディの他に、...

女子でバンドをつくりたくて

〜「ランナウェイズ」④〜

  女子でバンドをつくりたくて   「女子でバンドをつくりたくて」というジョーンにキムは 閃くものがありました。 最近の女には目指す理想がない。このバンドが新しい理想だ。 女たちはもう、彼氏に連れられてつまらないコンサートに 来た女じゃない。「ランナウェイズ」は新しいビートルズ...

あの人、キム・フォーリーだ

〜「ランナウェイズ」③〜

  あの人、キム・フォーリーだ   自称「ヒステリーの王」キム・フォーリーはレコード・プロデューサー。 ロック・ファンがごった返す盛り場で彼を見かけたジョーンは 声をかける。 お気に入りの革ジャンでさっそく身を固めている。 「俺はヒステリーの王だぞ。君はすごいバンドの歌手なんだ...

ママに殺される

〜「ランナウェイズ」➁〜

  ママに殺される   のちに「ランナウェイズ」の華、ボーカルとなるシェリーが 自宅で鏡に向かい、自分で長い金髪にハサミを入れている。14歳。 「ママに殺される」 「下手くそ。貸して」と姉マリーが真っ赤なメイクを入れてやる。 姉妹は双子でとても仲がいい。テレパシーで考えているこ...