ドミニク・ウェスト

君が書けるじゃないか!

〜「コレット」⑪〜

  君が書けるじゃないか!   「ローンに外食、賭け事、浪費をやめるの」 節約を説くコレットに、ウィリーはひらめく。 「君が書けるじゃないか!」 ポカンとしているコレットに 「急いで書き上げるのだぞ。取立屋が来るぞ」 どこまでも調子のいい夫のご都合主義に、 でもコレットは腹...

労働の対価を払え!

〜「コレット」⑩〜

  労働の対価を払え!   ウィリーが吊し上げを食っています。 彼のゴーストライターたちが、 「労働の対価を払え」とねじ込んできたのです。 なだめすかして引き上げさせたとたん、 「ふん、私の名前がなければ仕事もないくせに」 ウィリーという人物、物を書くより、マネジメントに才能...

何かにかかわりたい

〜「コレット」⑨〜

  何かにかかわりたい   夫が迎えに来ました。 「パリの女をみんな足しても君にはかなわない」 ヌケヌケいう彼に 「あなたの底は見えたわ。せめて嘘をつくのだけはやめて」 そして独り言のように 「何かにかかわりたい。妻に終わらず世界に触れていたいの」 これですね、ボーヴォワー...

あなたらしい結婚にするの

〜「コレット」⑧〜

  あなたらしい結婚にするの   母親はこうも諭します。 「結婚という形になれなきゃ。あなたらしい結婚にするの」 あなたらしい結婚にするの、なんて、 喧嘩して帰ってきた今の時代の娘にも使えそう。 我慢が大事だとか、あなたも反省してとか言わないところがいいわ。   ...

演じている気がしたことは?

〜「コレット」⑦〜

  演じている気がしたことは?   母親と一緒に実家の畑の手入れをしながら 「演じている気がしたことは?」とコレットは訊く。 「妻や母親の役割をこなしていると」 「“妻”は時々ね。“母”としては、ない。ウィリーはやさしい? 何があったの」 「想像と違ったの」 結婚に失望した...

私は認めない!

〜「コレット」⑥〜

  私は認めない!   夫の浮気発覚。 「彼女とは別れる。だがこれは男のサガなのだ。男は衝動に弱いし、 都会ではよくあることだ」 「私は認めない! 嘘をつかれ、ただ帰りを待っていた。 金欠だ、金欠だと。女にお金を使うからよ。 しかも夜は疲れているからと私に触れようともしない」...

みんな薄っぺらな自惚れ屋

〜「コレット」⑤〜

  みんな薄っぺらな自惚れ屋   帰りの馬車で「サロンの感想は?」とウィリーに聞かれたコレット。 「カメが気に入ったわ。私と同じで退屈していた」 「気後れしていたかと心配したが」 「まさか。みんな薄っぺらな自惚れ屋だもの」 20歳そこそこの世間知らずとは思えない発言。 傲慢と...

土と草が恋しい?

〜「コレット」④〜

  土と草が恋しい?   きらびやかな装飾を施された広間の隅に、 まるで宝石の置物みたいなカメがいました。 甲羅にキラキラ飾りをつけ、台座に乗せられています。 コレットが話しかける。 「かわいそうに。土と草が恋しい?」 ブルゴーニュの森や小川、畑には豊かな作物。 そんな環境...

この方、身寄りのないご親戚?

〜「コレット」③〜

  この方、身寄りのないご親戚?   コレットの社交界デビュー。 ウィリーが美しい妻を紹介しますが 彼女がサン・ソヴール出身だと知ると反応は冷ややか。 「この方、身寄りのないご親戚か何か?」 侮辱ですね。 おまけに「まあ、驚いた。天下の遊び人を射止めたのね」 ウィリーの浮名...

あなたは私を選んでくれた

〜「コレット」➁〜

  あなたは私を選んでくれた   コレットがせっせとウィリーにラブレターを書いています。 「パリのどんな女性より、あなたは私を選んでくれた。 あなたの隣で目覚め、 この一日が、この一生が、二人のものだと感じたい。 私たちはきっと幸福になれる」 のちのコレットからは信じられない...